次の追加緩和では「量」から「金利」に政策の軸足を変更するとの予測も
そもそも、金融政策の根幹にも、変化の兆しをみるむきがある。「黒田バズーカー」と呼ばれる今の緩和策の最大の特徴は、政策の軸足を「金利」ではなく「マネタリーベース」(量)に変更したこと。
しかし、日銀がこの5月に発表した「金融緩和の効果の検証」というリポートでは「マネタリーベース」の文字はどこにも出てこない。市場には「日銀はマネタリーベース目標から軌道修正しようとしている」との声が出ており、次の追加緩和では「量」から「金利」に政策の軸足を変更するとの予測も出ている。
そうなると、政府と日銀の距離感にも、市場の関心が向くところだ。実際、春先に市場で安倍晋三首相と黒田総裁の間の「隙間風」が盛んにささやかれた際、理由の一つとされたのが安倍政権の円安の負の側面(生活物資の値上げなど)への懸念だった。そう考えると、「今回、黒田総裁が円安のスピード調整を図ったのだとすれば、両者の関係修復の証し」(市場関係者)との見方も出るところだ。
傍証として、黒田総裁が「口先介入」前の6月2日、安倍晋三首相と官邸でじっくり会談したことを挙げる関係者もいる。
日銀が「異次元緩和」を脱して、金融政策が常態に復するまでには、相当の時間を要するのは間違いない。黒田総裁自身、異次元緩和からの「出口」に関する議論は時期尚早として封印している。
ある政府関係者が打ち明ける。「(年内にも利上げが予測される)米国と違って日銀の出口は見えてこない。首相は次の総裁も黒田さんにお願いするつもりではないか」。そんな気の早いささやきが聞こえるのは、デフレとの戦いが、なお道半ばであることの裏返しなのかもしれない。