春節や桜のお花見シーズンに、家電製品などを「爆買い」していた中国人の関心はいま、日本の家庭薬にも拡大したようだ。
なかでも、中国のインターネットメディアが2014年秋に「日本に行ったら買わねばならない医薬品」と紹介した「神薬」が注目され、日本を訪れた中国人観光客らがドラッグストアで「爆買い」している。
中国国内で口コミで広がっている・・・
いま、日本で売れている家庭薬は2014年秋に「日本観光、この12種類の『神薬』は買うべし! 中国人の心をつかんだ日本の優れもの」の見出しで、中国のインターネットメディアが紹介したもの。レコードチャイナ(2014年9月5日付)などが取り上げていた。
「神薬」とされるクスリは、参天製薬の目薬「サンテ ボーティエ」や、エスエス製薬の「イブクイック頭痛薬」や女性のシミやそばかす対策の「ハイチオールC」、久光製薬の湿布薬「サロンパス」。さらに、皇漢堂製薬の便秘薬「ビューラック」や口内炎に直接貼って治す大正製薬の「口内炎パッチ」、のどの不調をやわらげる龍角散の「龍角散ダイレクト」がそれ。
小林製薬からは、肩こりや筋肉痛をやわらげる「アンメルツ」や、傷口に塗ると皮膜でバイ菌の侵入を防ぐ、液体絆創膏の「サカムケア」、急な発熱時などに額に貼る「熱さまシート」、二の腕などのブツブツを治せるクリームタイプの塗り薬「ニノキュア」に、更年期障害や生理不順に効果が見込める「命の母」の5製品をピックアップしている。
紹介されているクスリは、どれも日本ではドラッグストアで、ふつうに販売されている、お馴染みの家庭用常備薬ばかりだ。
そうした中で、小林製薬は「神薬」として紹介された製品の一部が、中国人観光客らの「爆買い」などで、2015年4~6月期の売り上げが前年同期と比べて5倍超に膨らんだことを明らかにした。液体絆創膏の「サカムケア」の売り上げが5.43倍に増えたほか、「ニノキュア」は52%増、「熱さまシート」は37%増となった。
小林製薬は、「売り上げは14年ごろから伸びています。ただ、購入するクスリは決まっているようです。すでに中国国内で、口コミで広がっているようで、お目当てのクスリをまとめ買いしていくようです」と話す。
たとえば、「サカムケア」は「キッチン用洗剤などの品質がよくないようで、手荒れなどに使っているようです」とみていて、売り上げの7割が中国人観光客らのインバウンド需要という。
また、中国人ならでは事情もあり、「子どもには品質が安心できるものを、と『熱さまシート』は子供用がよく売れていたり、パッケージに金色や赤色が使われている製品に目が行くようで、たとえば歯槽膿漏を予防するハミガキ『生葉EX』は1500円ほどするのですが、これが大人気で売れています」と話している。
「爆買い」の1番人気、じつはクスリ?
中国で「神薬」として紹介された効果は大きいようで、「イブクイック頭痛薬」や「ハイチオールC」が取り上げられたエスエス製薬も、「薬局などから、中国人観光客らに『売れている』という情報は聞いていますし、最近はドラッグストアなどから『中国語のPOPを提供してほしい』という要望もあります」と話している。
あるドラッグストアでは、わかもと製薬の胃腸薬「強力わかもと」や、武田製薬の疲労回復薬「アリナミン」などが売れていて、ほしいクスリの画像をスマートフォンで見せて買い求めることも少なくない。一度に一人で3~4万円も買っていくケースもあるそうだ。
中国人観光客らに日本の家庭薬が売れる背景には、家電製品や化粧品などと同様に、2014年10月からの免税制度の改正があるが、中国の医薬品メーカーの一部がクスリの価格を抑えるために粗悪な原料を使用していることや、その一方で「よいクスリ」は価格が高く、手に入りにくいことがあるとされる。そういった不安や、日本のクスリは副作用の心配も低く、安心して飲めるという評判から、「爆買い」する傾向にあるようだ。
中国人観光客がよく買っていく場所も決まっていて、「都市部、なかでも東京なら秋葉原、大阪では心斎橋や道頓堀、あとは空港周辺のドラッグストアで買っていくようです」と、小林製薬は分析。家電製品を買うついでにドラッグストアに寄っていくケースが多いとみられる。
じつは、中国人観光客の「爆買い」の1番人気はクスリとの情報もある。2015年4月11日付のレコードチャイナは解放日報の報道として、中国人旅行者の医薬品の平均購入額は2010年の551元(約1万500円)から、15年は5200元(約9万9000円)に急増した。話題になった温水洗浄便座や炊飯ジャーなどを上回っていたようだ。