作家の百田尚樹氏が自民党内の勉強会で沖縄県の県紙、沖縄タイムスと琉球新報について「絶対つぶさなあかん」などと発言したとされる問題で、両紙の武富和彦、潮平芳和・各編集局長が2015年7月2日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、「表現・言論の自由が危機的な状況」などと訴えた。
「沖縄県民を愚弄するもの」
沖縄タイムスの武富氏は、
「1番の問題だと感じているのは、百田さんの言葉を引き出した自民党の国会議員だと思っている。沖縄の世論を『ゆがんでいる』として、『正しい方向に持って行くにはどうすればいいのか』という質問は、沖縄県民を愚弄するもので大変失礼だと感じる」
などと述べ、百田氏の発言そのものよりも、そのきっかけになった自民党議員の質問を問題視。今回名指しされたのは沖縄の2紙だが、今後はそれ以外のメディアも対象になる危険性を警告した。
「自分たちの気に入らない報道、論説は許さないという、まさに表現の自由、報道の自由、を否定する思考が根底にある。この思想は沖縄にとどまらず、いずれ全てのメディアに向けられる可能性がある」
県紙の報道が「偏向」していて「世論を誘導している」という批判については、
「民衆の支持がないと新聞は存続できない。沖縄の新聞社の報道は、新聞社が世論をコントロールしているのではなく、世論に突き動かされて新聞社の報道があると思っている」
などと反論した。
問題発覚後、激励増える
琉球新報の潮平氏も、武富氏と同様の主張を展開しながら、
「この国の民主主義、表現の自由、言論の自由は、危機的な状況にあると思う」
と訴えた。
今回の問題をめぐっては、安倍晋三首相が7月1日に公明党の山口那津男代表と会談した際に、「我が党の議員のことでご迷惑をおかけして申し訳ない」などと陳謝した経緯がある。潮平氏は、これが「半歩前進」だとしながらも、安倍首相は国会や国民に対しても陳謝すべきだと主張した。
世論は総じて2紙に好意的なようだ。武富氏によると、問題発生後、寄せられるメールや電話の数は増加したが、「その7~8割が激励」。中には
「『売国奴』『非国民』『日本から出て行け』といった声もあるが、その数は問題発覚前から大きく変わっておらず、「むしろ『応援するぞ』という声が増えたと感じている」
という。