著作家の乙武洋匡さん(39)がツイッターで、新聞社から取材依頼があり、写真は「カメラパーソン」が撮影すると言われた、と明かした。
「『カメラマン』さえ、口にできない時代なのか」と呟いたため、ネットでは「言葉狩りだ!」「カメラマンでいいじゃないか」などと大騒ぎになった。
「もう『カメラマン』さえ、口にできない時代なのか」
乙武さんは2015年7月1日に自身のツイッターで、
「とある新聞社からの取材依頼。『写真は弊社写真部のカメラパーソンが撮影させていただきます』――なんと、もう『カメラマン』さえ、口にできない時代なのか...。」
と呟いた。確かに、特にデジタルカメラの普及以降は女性のカメラ担当も増え、男女雇用機会均等法改正では雇用において男女差をつけることが全面的に禁止されたことから、「カメラマン」は男性を指すものであり、新たな呼び名が必要だ、という議論も起きていた。ビジネスマンをビジネスパーソン、セールスマンをセールスパーソンなどと呼ぶようになってきたため、乙武さんはとうとう「カメラマン」が「カメラパーソン」に変わったことを自ら体験し、ツイッターで報告したようだ。
ただし、この「カメラパーソン」は聞きなれない言葉のためか、ネット上では首を傾げる人が多くいて、
「実際に『言葉狩られた』結果なのか」
「差別的な言葉や人が不快に思う言葉は止めるべきだと思うが、これはいったいダレトクなのか。というより意味がないこと」
「無理やりカタカナにしなくても。撮影担当、って言われた方が男女の区別差別ないしわかりやすい」
「私の夫もこれからは『カメラパーソン』!?わからんでもないけど、こだわりどころが違う気がする」
などといった批判的な書き込みがツイッターやネット上に現れることになった。
カメラマンの名称に関しては募集広告でも変化が起きているようで、「カメラパーソン募集」のほか「フォトグラファー募集」「撮影スタッフ募集」などと書いているものもある。厚生労働省のHPにある「男女均等な採用選考ルール」によれば、一方の性に偏った従業員募集は違法であり、「ウエイター」「○○レディー」といった表現も認められない、としている。ではカメラマンはどうなのか。
呼び方を変えようという議論すら出ていない
東京都労働局雇用均等室に話を聞いてみると、カメラマンという言葉は使ってはいいけれども、広告全体から男女共に募集していることが分かるものでなければならない。男性しか採らないと思えるような広告はアウトで、
「一つの例ですが、カメラマン募集(男女)となっているのが好ましい」
と担当者は説明した。
では新聞社では乙武さんの呟き通りに「カメラパーソン」という呼称になっていくのかというと、事情はかなり違うようだ。都内の複数の新聞社に問い合わせたのだが、
「そんな話は聞いたことがありません」
とし、「カメラパーソン」という言葉自体が分からないという担当者もいた。日本新聞協会にも聞いてみたが、カメラマンという呼び方を変えようという議論すら出ていないという。朝日新聞広報も、カメラマンの呼び方については、
「特に決めておりません」
ということだった。どうやら「カメラパーソン」と言っているのは、ごく限られた記者だけのようだ。