石油輸出国機構(OPEC)が2015年6月上旬の総会で、加盟12か国の目標生産量について、現行の日量3000万バレルの据え置きを決めた。
昨秋から急落した原油価格は、足元で緩やかながら持ち直しているため、「景気回復で需要の増加が期待できる。市場の動きを見守る」(議長国カタールのサダ・エネルギー・産業相)という判断だ。
値下がりをあえて放置
原油安が進む中で開かれた2014年11月の前回総会では、ベネズエラなど一部加盟国が減産を強く主張したが、OPECの盟主サウジアラビアが減産に頑として応じなかった。減産して値上げしても、シェアを米国のシェールオイルに奪われることを強く警戒したもので、逆に値下がりをあえて放置することで価格競争に持ち込めば、生産コストの高い米国のシェールオイルが開発コストを割って先に音を上げる、という見立てだった。
実際、この総会後、原油安に拍車がかかり、北海ブレント原油の先物は年明け1月に1バレル=46ドル台まで下落。米国でシェール開発の勢いが頭打ちになる一方、シェールの生産減速に歩調を合わせるように原油価格は5月以降、同65ドル前後まで回復した。OPEC内で今回の総会に向け、減産の声が目立たなかったのは、こうした事情による。
OPECは、市場シェア確保に向けて仕掛けた「チキンレース」に、ひとまず勝利を収めたと判断できそうだ。
ただし、先行きについては、不確定な要素が多く、簡単には読めない。
相場回復と言っても、直近ピークの同110ドル(2014年6月)から半値近い低水準にとどまる。中国の景気減速など需要の低迷もあるが、サウジアラビアをはじめOPEC各国が高水準の生産を続けていることが大きい。国際エネルギー機関(IEA)のまとめでは、OPECの4月の生産量は日量3121万バレルと目標生産量を超えている。
米国のシェールオイル業者も、やられっ放しではない。生き残りのためにコスト削減を必死に進めているから、供給過剰の解消は容易ではないだろう。そうなれば、原油価格の低迷が長引く恐れがあり、OPEC内でもベネズエラやナイジェリアなど財政事情が苦しい国は経済悪化が深刻化しかねず、OPEC内部の不協和音が高まる可能性もある。