総合インターネットグループのGMOインターネットが、銀行業に参入する。あおぞら銀行と共同でインターネット銀行を運営する方向で検討に入った。
最近は、政府などが進める「フィンテック」(金融とITとの融合による新しい金融テクノロジー)の議論が活発になっていることもあり、あおぞら銀行は「オープンイノベーション(外部連携による革新)は必要ですし、その(政府の)方針に合致する」と話している。
中小事業者向け小口融資で、既存のネット銀行との差別化狙う
GMOインターネットと、あおぞら銀行は共同でインターネット銀行を運営することについて、検討を開始したと2015年6月29日に発表した。あおぞら銀行の100%子会社である「あおぞら信託銀行」の活用を前提とし、そうすることで銀行免許の取得手続きなどの手間を省き、早ければ2016年度中に営業を開始する。
今後、スケジュールや事業戦略、サービス内容などを具体的に詰めるほか、GMOによる、あおぞら信託への資本参加や行名の変更などについても検討する。あおぞら銀行は、「お互いに、近い考え方をもっています」と話している。
現在のスマートフォンの普及や電子商取引(EC)市場の拡大は、これまでの伝統的な銀行のサービスだけでは対応できない多様なニーズを生み出している。そうした環境のなか、ネットユーザーの利便性が向上でき、また両社の強みを生かせるサービスを提供する。
インターネット銀行は、三井住友銀行系のジャパンネット銀行や、ソニー銀行や楽天銀行、住信SBIネット銀行などが先行。そのほとんどが店舗をもたない低コスト運営を武器に、比較的高い金利で預金を集めて、住宅ローンや個人ローンで運用したり、ネットショッピングや公営競技の資金決済を提供したりする、リテール(個人取引)業務に力を入れている。
一方、GMOとあおぞら銀行のネット銀行は、中小事業者向けの小口融資に注力する方向だ。GMOはネットショップの開設支援などを通じて約8万社と取引がある。そういった事業者向けに、ネットを通じて仕入れ資金などを貸し出す。審査や与信管理のノウハウはあおぞら銀行が提供。「商流のタイムラグを埋める資金の発生に対応できる」(あおぞら銀行)とみており、既存のネット銀行との差別化を図る。
あおぞら銀行の利用者は比較的高い年齢層が中心で、店舗数も少ない。このため、ネット銀行への参入によって、若者世代や地方の新規顧客を掘り起こす狙いもある。
同行は1998年に経営破たんした旧日本債券信用銀行が前身。国から総額3200億円の公的資金が投入されていたが、折しも、残っていた1434億円の公的資金を6月29日に完済。ネット銀行への参入は「(GMOと)以前から話をしてきたこと。景気回復や株式市場の好転もあって、(公的資金の完済は)たまたま同じタイミングになっただけ」というが、気分一新といったところだ。
GMO熊谷社長、「400億損してもw誰に何を言われてもw絶対に諦めません」
一方、GMOインターネットにとって、銀行業への参入は悲願だったようだ。じつは、GMOの銀行業への「挑戦」は今回が2度目になる。2006年3月、GMOはネット銀行のイーバンク銀行の株式を第三者割当によって引き受けた。それにより、保有していた株式3万918株とあわせると、法人としてはイーバンク銀行の筆頭株主に躍り出た。
GMOはイーバンク銀行が提供する決済サービスによって、GMOユーザーの利便性を向上させるなど、「ネット金融」の高い成長性に期待していた。
さらに同年には「GMOインターネット証券」(現GMOクリック証券)を設立し、証券業務に参入。「もともと、既存のネットインフラ事業やメディア事業と、金融事業はきわめて親和性が高く、さまざまな相乗効果が期待できるとみていました」(GMOインターネット)と話し、本格的に金融事業に乗り込んでいこうとしていた。
ところが、そのイーバンク銀行を楽天が買収してしまった。2009年2月に子会社化され、10年5月には「楽天銀行」に商号を変更。GMOは「現在は資本も、業務の関係もありません」という。
そんな経緯もあってか、「ホリエモン」こと堀江貴文氏はツイッターで、
「熊谷さん10年越しの悲願達成ですね」
とつぶやいた。祝福の気持ちがあったのかもしれない。
GMOの熊谷正寿社長も「400億損してもw誰に何を言われてもw絶対に諦めません」とツイート。熊谷社長の金融事業への並々ならぬ決意のほどがうかがえる。
ちなみに、証券業務は外国為替証拠金(FX)取引の年間取引残高で975兆円(2015年3月末)を記録、3年連続世界一を達成している。ネット銀行には、証券業務との連携も期待されている。