万一に備え国内335か所に入院医療機関指定
韓国でも現時点では、MERS感染者の家族間や医療機関の患者間、患者と医療従事者間での感染にとどまり、感染ルートも把握されている。世界保健機関(WHO)のケイジ・フクダ事務局長補は2015年6月17日の会見で、現段階では「国際的な公衆衛生上の緊急事態」には当たらないとの見解を明らかにした。
とは言え、韓国に渡航した際に感染者のいる医療機関に近づくような不用意な行動は禁物だ。岩田医師は、「もちろん、感染力が弱いから安全という意味ではありませんし、流行地域に行く場合は、感染しないための一般的な衛生対策は必要です」と強調する。フクダ事務局長補もNHKのインタビューに対して、「ウイルスは世界中に広がるおそれがある。日本や各国は十分な警戒が必要だ」と述べた。
国内では厚生労働省が2009年の新型インフルエンザ流行を踏まえ、MERS感染拡大が起きないよう、感染者が発生した都道府県内で治療が完結する体制を整えている。全国335か所に入院医療機関を指定し、各地の保健所や地方衛生研究所でMERSの検査が可能な態勢を整えた。万一、中東や韓国から帰国して1~2週間後に発熱や咳などの症状がある場合、直接医療機関には行かず、最寄りの保健所に流行地域に滞在していたことを告げ、その後の検査を待つことになる。[アンチエイジング医師団取材TEAM/監修:岩田健太郎 神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長]
アンチエイジング医師団
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