航空会社「スカイマーク」の民事再生手続きで、会社側と大口債権者が、それぞれ出した再生計画案の両方が、2015年8月5日の債権者集会に諮られることになった。
債権総額の2分の1以上の債権者の賛成などを得た方の案が認可される。東京地裁が6月15日に決定したもので、異例の投票決着になる。
水面下で凄まじい主導権争い続く
まず、会社側の再生計画案は5月29日に地裁に提出された。投資ファンド「インテグラル」、ANAホールディングス、投資ファンド「UDS」(日本政策投資銀行と三井住友銀行)の3者が計180億円を出資し、うち少なくとも155億円を借金の返済に充てるのが主な内容。届け出債権総額のうち返済される率(弁済率)は「5%以上」とした。
これに異を唱えたのが最大債権者の米リース会社「イントレピッド・アビエーション」。ANAによる支援に反対して同日、独自の再生計画案を提出。この時点で弁済率は「3%以上」だったが、6月10日に「5%以上」に引き上げた修正案を提出した。支援する航空会社については、デルタ航空などと交渉を進めている。
東京地裁が両案の付議を決めたのは、イントレピッドの弁済率がスカイマーク案と並んだからだが、第2位の大口債権者である欧州エアバスの意向が不透明なことも、地裁の判断に影響したとみられている。
ここで債権の状況を確認しておこう。債権者が主張する届出債権総額は約3089億円。うち、イントレピッドが約1150億円強、欧州航空機製造大手エアバスが約880億円強で、両社合わせた債権額は全体の2分の1を上回る。
届出債権額は未確定の部分が多いとしてスカイマーク側は減額を求めており、債権者集会までに東京地裁が議決権を決定することになる。必ずしも届出債権額ベースの議決権が与えられるとは限らないが、両者が大口債権者であるのは間違いなく、旗幟鮮明にしていないエアバスの動向に注目が集まるわけだ。
年明け以降のスカイマーク再建の協議では、元はと言えば、スカイマークとインテグラルがANAへの不信を強めて決裂寸前になる中で、大口債権者たるイントレピッドとエアバスの意向でANAと「和解」し、スカイマーク案が決まった経緯がある。インテグラルが出資比率50.1%を確保して主導権を何とか握るにあたって、水面下では凄まじい主導権争いがあったとされる。
運航は支障ない
ところが、ANAと大口債権者2社の間がおかしくなる。イントレピッドは、スカイマークの破綻で浮いた機材をANAにリースすることを求め、両社はいった合意文書を交わしたが、最終的に条件が折り合わず、決裂したという。途中の合意について、ANA側は法的拘束力がない文書だとして「問題はない」として、対立するに至った。
エアバスの方は、決裂までは行っていないようだ。スカイマークの破綻で契約を解除された航空機の扱いを巡り、エアバスはANAに一部を買い取るよう求めて交渉中と伝えられる。エアバスはANAと交渉がまとまればスカイマーク案に賛成するはずだが、決裂した場合はどうなるか。イントレピッド案に乗るのではないかとの見方も出ているが、ANAは現在もエアバス機を12機保有し、2023年までにさらに37機を追加発注している「お得意さま」だけに、「長年の取引関係を大事にし、最終的にはエアバスの賛成を得られる」(スカイマーク関係者)との声もある。また、エアバスが両案ともに反対する可能性もあり、その場合は、再生案は白紙に戻り、一から作り直すことになる。
8月5日に最終決着すればよし。しなくても、スカイマークの当面の運航は支障なく継続される見通しだ。ただ、再生案の練り直しとなれば、提携の枠組みが大きく変わることも考えられる。