自民党の若手議員らが勉強会で「スポンサーは政権に批判的なマスコミに広告を出すな」といった内容の発言をしたと報じられ、言論統制だなどと批判が相次いでいる。2015年9月の党総裁選を前に、安倍晋三首相が進める安保関連法案が報道のせいで理解されない、という焦りやいら立ちが発言の背景にあるようだ。
この勉強会「文化芸術懇話会」(代表・木原稔青年局長)は、安倍首相に近い議員らが立ち上げ、2015年6月25日に37人が参加して党本部で初会合を持った。
百田尚樹氏も「沖縄2紙をつぶせ」などと発言
マスコミに公開されたのは、作家の百田尚樹氏が講師として話した冒頭の2分ほどだった。それ以外は、出席者らから話を聞くなど独自の方法で各マスコミが内容を取材したらしい。
その報道によると、議員からは、次のような踏み込んだ発言が次々に出た。
「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」「不買運動するのを働きかけて欲しい」...
ネット上では、マスコミ批判が起きたときに、スポンサーに電話突撃して広告を取り下げてもらうよう働きかける「電凸」という手法が唱えられたことがある。議員らは、こうしたネット上の動きを参考にして、マスコミ不信の思いをぶつけたようだ。
議員の声に触発されたのか、過激な発言で知られる百田氏も、マスコミ批判をぶち上げた。報道によると、沖縄の地元紙について「左翼勢力に完全に乗っ取られている」と議員が指摘したことに対し、百田氏は、「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張したというのだ。
小林よしのり氏は「全体主義の空気が蔓延」と批判
若手議員らの発言内容を伝える報道を受けて、ネット上では、「確かにマスコミの報道にはうんざりする」「公平な報道をしないのが悪い」といった声は上がった。しかし、政権側の驕りだとする声はかなり多く、「これが言論統制でなくて何なの」「中国や北朝鮮のことを笑えない」などと批判が相次いでおり、「発言した政治家の特定をしてほしい」との要求も出ていた。
安保関連法案の進め方については、自民党内から異論も出始めているが、それに対する「言論統制」ともみられるような動きも出ていた。
報道によると、リベラル系とされる議員の勉強会が同じ6月25日に予定されていたが、党幹部から「法案審議に影響がある」との指摘が出て中止に追い込まれた。それは、「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」とうたった勉強会だった。そこでは、法案には批判的な漫画家の小林よしのり氏が招かれる予定になっていた。
小林氏は、それを受けてブログを更新し、「どうやらリベラル系の勉強会は、まさに安倍応援団にとって『邪魔者』だったらしく、排除されてしまった」と嘆いた。そして、「自民党内にはもう多様な意見は許されない 全体主義の空気が蔓延しているのだ」「いつか、あれが独裁政治の兆候だったと言われる日が来るかもしれない」とまで非難している。
若手議員らの発言については、自民党内からも「安保法案の審議にマイナスだ」と声が上がるほど反響を呼ぶ事態になった。これを受けて、執行部からも苦言が出ており、安倍首相も26日の衆院平和安全法制特別委員会で、百田氏が沖縄2紙をつぶせなどと発言したことについて、「報道が事実なら大変遺憾だ」と述べた。
なお、百田氏は後にこの発言について、「冗談として言った」とツイッターで釈明している。