心筋梗塞や脳梗塞のリスクも増える
骨粗しょう症が心血管や脳血管に影響を及ぼすという報告もある。骨がもろくなることと血管の病気に何の関係があるのかと疑問だが、メカニズムはこうだ。
体内のカルシウムが不足すると、骨からカルシウムが血液中に溶け出す。しかし血液中のカルシウム量が増えすぎると、余剰分が血管壁に付着する。これが石灰化して血管を硬くし、動脈硬化を招く。進行すれば、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる重大な病気を引き起こす。骨粗しょう症の真の恐ろしさは、これらの合併症にあるのだ。
骨粗しょう症を予防するには、偏食や過度なダイエットは避け、カルシウムやビタミンDなど骨をつくる栄養を十分にとる、骨に負荷をかけ、丈夫な骨にするための適度な運動を心がける、カルシウムの吸収を妨げるタバコは控える、利尿作用の強いアルコールは飲み過ぎに気をつけるなど、日々の心がけが大切だ。とくに日本人はカルシウム摂取量が少ない傾向にあるので、意識的にとる必要がある。
「日本人の食事摂取基準2015」(厚生労働省)によれば、30代以上の人のカルシウム摂取推奨量は650~700ミリグラム。牛乳やチーズなどの乳製品のほか、豆腐や厚揚げなどの大豆製品、小松菜やひじきなどの野菜や海藻類、いわしや桜えびなど骨や殻ごと食べられる魚介類に多く含まれている。牛乳なら1日コップ3杯程度で推奨量を満たすが、カロリーが気になる人や乳製品が苦手な人は、豆腐とわかめの味噌汁や、桜えびと小松菜入りチャーハンなど、手軽に作れるものを毎日の献立に取り入れることから始めよう。骨密度は専用の検査機器のある医療機関で測定できるほか、40歳以上の女性を対象に定期検診を行っている自治体も多い。気になる人は一度検診を受けてみてはいかがだろうか。[Aging Style取材TEAM/監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]
参考論文
Increased Risk of Sudden Sensorineural Hearing Loss in Patients With Osteoporosis: A Population-based, Propensity Score-matched, Longitudinal Follow-Up Study
DOI: http://dx.doi.org/10.1210/jc.2014-4316
PMID:25879512
アンチエイジング医師団
「アンチエイジングに関する正確で、最新かつ有効な情報」を紹介・発信するためにアンチエイジング医学/医療の第一線に携わるドクターたちが結成。 放送・出版などの媒体や講演会・イベント等を通じて、世の中に安全で正しいアンチエイジング情報を伝え、真の健康長寿に向き合っていく。HPはhttp://www.doctors-anti-ageing.com 2015年4月1日から医療・健康・美容に関する情報サイト「エイジングスタイル(http://www.agingstyle.com/)」の運営も開始。