マーガリンや食用油などに含まれ、摂りすぎると肥満や心臓疾患などのリスクが高まるとされる「トランス脂肪酸」を、米食品医薬品局(FDA)が国食品添加物から全廃するとの方針を打ち出した。
過剰な摂取はLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増加して、肥満や糖尿病、動脈硬化に心臓疾患のリスクを高めるといわれ、また2014年11月には米国で記憶力が低下する傾向があるとの研究結果も発表された。トランス脂肪酸を含んでいる食品の使用を規制する国が増えているようだ。
菓子パンやドーナツ... よく口にしている食べ物にも多く含まれている
トランス脂肪酸は、天然由来の植物油や乳製品などにはほとんど含まれず、人工的に、水素を付加して硬化させた固形の油脂を製造する過程で発生するため、それを原料とするマーガリンやショートニング(食用油脂)などに多く含まれている。
さらにはショートニングを原材料とする、ピーナツバターやコーヒークリーム、カレーやシチューのルウ、インスタント麺、女性が好む食パンや菓子パン、ケーキにアイスクリーム、クッキー、ピザなどにも多く含まれる。
また、外食産業などで揚げ油に使われていることがあり、フライドポテトやチキンナゲット、ドーナツ、惣菜のコロッケや天ぷら、鶏のから揚げといった食べ物にも含まれている。
こうしてみると、ふだんからよく口にしているという人は少なくないはず。米国ではそんな「トランス脂肪酸」を、日本の厚生労働省にあたる米食品医薬品局(FDA)が2018年6月までに食品添加物から全廃するとの方針を、2015年6月16日にホームページで明らかにした。
FDAは、2013年にトランス脂肪酸を廃止する方針を示し、その科学的な妥当性を検討してきたが、最終的に食品に使用するうえで「一般的に安全とは認められない」と結論づけた。
FDAのスティーブン・オストロフ長官代理は、「今回の措置で、冠状動脈性心臓病が減少し、年間数千件にのぼる致死性の心臓発作を防止することが期待される」と語っている。
この措置で、米国で市場展開する食品メーカーなどは今後3年間で代わりの添加物を使うなどの対応が求められることになる。
米国でのトランス脂肪酸「全廃」の方針を受けて、日本のインターネットでは、
「気になりつつも、毎朝パンにマーガリンつけて食べてるなぁ」
「これは日本もやるべきだわ」
「ショートニングって、スナック菓子の成分表によく書いてある。日本のクッキーはほとんどダメだね」
「まじ? 好きなもんだらけなんだが・・・」
といった、「食べるものがなくなる」と心配する声とともに、日本の対応を気にする声が寄せられている。
日本人は摂取量低く、健康被害への懸念小さい
現在、日本では消費者庁が2015年4月1日に施行された食品表示法で、これまでメーカーが任意で表示してきた栄養表示を義務化。栄養表示基準に基づいて、新たに食品表示基準が定めた。
しかし、その栄養表示基準に「トランス脂肪酸」は含まれていない。消費者庁は「どの栄養成分に表示が必要か、議論してきましたが、トランス脂肪酸については日本人の摂取量が少ないことなどを理由に、(表示基準から)外れました」と説明する。
一般的に、日本人はトランス脂肪酸の摂取が、欧米人に比べて少ない。日本人の1日あたりのトランス脂肪酸の摂取量は平均で0.7グラム。欧州(14か国)では平均1.2~6.7グラム、米国は5.8グラムとされる。
つまり、摂取量が少ないので健康被害への懸念も小さいと判断したことで、日本でのトランス脂肪酸の、食品の容器包装やホームページ、広告などへの表示はすべてメーカーの任意となっているわけだ。
ちなみに、トランス脂肪酸の成分表示が義務付けられている国は、米国やカナダ、韓国、ブラジル、アルゼンチン、香港、台湾などで、日本やオーストラリアやニュージーランド、中国などは任意。EU(欧州連合)は、現在は任意だが、必須項目に加えるかどうかを検討している。
米国のように「全廃」とはいかなくても、世界的な潮流は規制強化に向いているようで、国内メーカーはそんな「空気」に敏感に対応している。
たとえば、小売り大手のセブン&アイ・ホールディングスは2010年12月から、トランス脂肪酸を含んだ食品をできる限り販売しない方針を打ち出し、「前向きに進めている」ところ。外食のモスバーガーやミスタードーナツなど、自主的にトランス脂肪酸を含んだ食品の表示を増やしたり、商品自体を取り扱わなくなったりしているメーカーは増えてきている。