神戸連続児童殺傷事件の手記出版で論議を巻き起こしている男性(32)が、「次は小説を書くことも考えている」と明かしたと週刊誌が報じた。過去に短編小説を書いたことはあるようだが、小説も出版するつもりなのだろうか。
男性が出した手記「絶歌」(太田出版刊)は、ネット上では、表現意欲に理解を示す声もあるものの、内容などを疑問視する声の方がかなり多い。被害者側が出版中止などを求めたことで、販売を見合わせる書店なども相次いでいる。
打ち合わせで「小説を書くことも考えている」
そんな中で、男性が小説の出版にも意欲を見せているという報道が出た。
男性は2012年冬、幻冬舎の見城徹社長に自分の本を出したいと手紙を書き、翌13年初めに幻冬舎で本の打ち合わせをしていた。週刊ポストの2015年6月22日発売号によると、その打ち合わせの中で、男性は、「1冊目はノンフィクションがいいが、次は小説を書くことも考えている」という内容の発言をしたというのだ。
幻冬舎はその後、贖罪意識が十分でないなどの理由から手記出版を取り止め、代わりに付き合いのある太田出版を男性に紹介している。
ポストの記事によると、男性は以前、関東医療少年院に入所して3年を少し過ぎたころ、少年院で授業をした童話作家に「僕は作家になりたい」と言っていたという。この童話作家は、「小説を書いたらどうか」と勧めていたといい、男性は、童話作家に自作の短編小説も渡していた。記事には、その一部が掲載されている。
男性が小説出版も提案していたことは、ネット上でも話題になった。
「表現する事で欲求を解消出来るならいい」といった声もあるが、手記出版が物議を醸しただけに、その話題性をさらに利用することになると疑問や批判が多い。「遺族の感情を逆撫でするような本を書き、まだ小説とか考えているなんて言語道断」「世の中なめすぎ」といった書き込みが見られるのだ。
男性が小説の出版も考えているというのは、どこまで本当なのか。
手記もゼロから書き直しでは、小説は難しい?
手記を出した太田出版では、男性が小説を出すかについて、「存じていません」と編集担当者が取材に答えた。手記の続編についても、聞いていないといい、「今後については分からないです」とした。
最初に男性と交渉した幻冬舎では、総務担当者が「ポストの記事で書かれたことについては、存じていません」と話すだけだった。
幻冬舎の見城徹社長は、週刊文春の6月18日発売号のインタビューで、男性の手紙について、「本に出来るくらい文学的」と絶賛していた。書きたいという強い欲求も感じて、男性には最初、「匿名で小説を書かないか」と持ちかけていたという。
しかし、男性がノンフィクションにこだわるので手記を書かせたものの、ゼロから何度も書き直してもらわなければ使えない内容だったそうだ。出版された手記についても、見城氏は、「編集者として、彼の本を出せなかった無念の思いはやっぱりある」とする一方で、「もっと原稿を直したかった」とも漏らしている。
週刊ポストの記事でも、男性が少年院で書いた短編小説について、童話作家は、「青春の虚しい心象と、決定的な喪失感が独特の文体によって書かれている」としながらも、「一読して内容が理解できるような代物ではありません」と指摘していた。実際、記事では、「内容も要領を得ない」「エンディングまで到底理解のできない文章が続く」と紹介している。
手記は、それに比べると「文章力は格段の進歩だ」としたが、当初はゼロから書き直さなければならないほどの出来だった。そんな男性が出版できるような小説を書けるかは、疑問の余地があるようだ。