手記もゼロから書き直しでは、小説は難しい?
手記を出した太田出版では、男性が小説を出すかについて、「存じていません」と編集担当者が取材に答えた。手記の続編についても、聞いていないといい、「今後については分からないです」とした。
最初に男性と交渉した幻冬舎では、総務担当者が「ポストの記事で書かれたことについては、存じていません」と話すだけだった。
幻冬舎の見城徹社長は、週刊文春の6月18日発売号のインタビューで、男性の手紙について、「本に出来るくらい文学的」と絶賛していた。書きたいという強い欲求も感じて、男性には最初、「匿名で小説を書かないか」と持ちかけていたという。
しかし、男性がノンフィクションにこだわるので手記を書かせたものの、ゼロから何度も書き直してもらわなければ使えない内容だったそうだ。出版された手記についても、見城氏は、「編集者として、彼の本を出せなかった無念の思いはやっぱりある」とする一方で、「もっと原稿を直したかった」とも漏らしている。
週刊ポストの記事でも、男性が少年院で書いた短編小説について、童話作家は、「青春の虚しい心象と、決定的な喪失感が独特の文体によって書かれている」としながらも、「一読して内容が理解できるような代物ではありません」と指摘していた。実際、記事では、「内容も要領を得ない」「エンディングまで到底理解のできない文章が続く」と紹介している。
手記は、それに比べると「文章力は格段の進歩だ」としたが、当初はゼロから書き直さなければならないほどの出来だった。そんな男性が出版できるような小説を書けるかは、疑問の余地があるようだ。