日本の漁船は小さく、競争力に欠ける
対策として、日本のかつお・まぐろ漁船を大きくして、1隻あたりの漁獲高を増やせばいいのではないか――。そう思う人は少なくないはず。しかし、じつは日本のかつお・まぐろ漁船は、資源の管理・保護を理由に漁業法の規定で船の大きさ(トン数制限)が決められている。日本の標準のかつお・まぐろ漁船の大きさは約1000トンで、船の長さも短く、漁倉容積も小さい。
ところが、中国や台湾、韓国、米国など海外の漁船は1800トン級が標準。漁倉も大きく、速力もあるうえ、魚群探査用のヘリコプターも搭載している。さらに、欧州の漁船は3200トン級の「スーパーセイナー」と呼ばれる大型船で操業しているのだ。とにかく、スケールが違う。
「しかも、入漁料は漁船の大きさには関係ありませんから、大きいほうが圧倒的に有利。つまり、経済性や効率性からも不利な条件で国際競争を強いられているのが現状なんです」と、前出の海外まき網漁業協会の中前明会長は説く。
VDS方式が導入されたことで、海外では1日あたりの漁獲量が増えるように漁船を大型化したが、日本はその波にも乗り遅れたということらしい。
海外の大型漁船との競争や燃油コストの上昇、最近の安価な漁価水準と、かつお・まぐろ漁船を取り巻く環境は厳しく、近い将来に廃業に追い込まれる可能性もないとはいえないようだ。