スマートフォンの画面を見ながら歩いている人に、ぶつかられそうになってヒヤリとした経験はないだろうか。実はこの「歩きスマホ」、日本に限らず世界でも社会問題化している。
アメリカではある大学の構内に「歩きスマホ」専用レーンが登場し、ユニークな取り組みだと話題を集めた。同様の試みは中国など世界各地であり、日本のネットユーザーにも取り入れるべきだという声が出ている。
階段に「歩行」「急ぎ」「歩きスマホ」の3区分
「歩きスマホ」専用レーンを導入したのは米ユタ州のユタバレー大学。構内のある階段を黄色の蛍光色で分かりやすく3つに区切り、左から「歩行」「急ぎ」「歩きスマホ」と書いた。
2015年6月に始まった、このユニークな取り組みはさっそく学内で話題となり、学外にもSNSで拡散。CNNやTIME誌など大手メディアにも取り上げられ、大きな反響を集めた。
ニュース映像を見ると、学生や教員らはきちんと表示に従って階段を行き来しているようだ。学生たちは左端を通常の速さで、まん中のレーンを駆け足で階段を上り下りする。右端の専用レーンではスマホを見ながら歩く人が、手すりを頼りにのろのろと歩いていた。
ただ、学校側としては厳密に区分に従わせることを意図した訳ではなく、どちらかといえばジョークや話題作りの意味合いが強いようだ。担当者は学内新聞で「機能性よりも見た目を重視した。本当にスマホに夢中になっている人は、このレーンには気付かないだろうからね」とコメントしている。
実は同様の取り組みはヨーロッパやアジアなど、世界各地にも存在している。
中国では歩きスマホをする人は、その姿勢から「低頭族」と呼ばれ、社会問題となっている。そこで重慶市は14年9月、彼らのための専用道路を作成。市内のある歩道50メートルほどに1本の白線を引いて、片側には「スマホを使ってはいけない」、もう片側には「スマホを使用してもよい、ただし自己責任で」と書いた。
この道路の件を伝えた国営通信社・中国新聞社の記事の写真では、標識に従ってスマホを使う人と使わない人は、きちんと別々のレーンを歩いていた。
日本では「歩きスマホ」で3人に1人がぶつかりそうになった経験
こうした取り組みは日本のネットユーザーの間でも話題を集めた。ツイッターなどを見ると「斬新だな」「意外といいかも」と好評で、「日本でもやったら面白そう」という声が上がっている。
背景には、歩きスマホをめぐる事故が増えていることもありそうだ。東京消防庁のまとめでは、歩きスマホが関係した事故で緊急搬送された人は10年の23人から13年36人と毎年増加している。13年には気付かず踏切内に入り、電車にはねられる事故が起きている。
また電気通信事業者協会が15年1月に発表した調査では、歩きスマホをしていて人にぶつかった経験がある人は4.5%。ぶつかりそうになったことがある人は33.7%でおよそ3人に1人の割合だ。