確実に白星を重ねるタイプではなかった
貴ノ浪の相撲は豪快そのもので、いかにも大相撲らしかった。堅実な相撲の貴乃花とは対照的で、大いにファンを沸かせた。今年、大関に上がった照ノ富士のような力士、といえば現在のファンに分かるだろう。
しかし、豪快は荒さをも意味し、故障にもつながる怖さを兼ねていた。確実に白星を重ねるタイプではなかった。
「力自慢の典型だろう。一気に横綱にまで登り詰めてしまえばよかったのだが、上位の相撲はパワーだけでは勝ち続けることはできない」。
ベテラン相撲記者の声である。
本人の言葉がある。
「(自分の相撲は)良い子がマネをしてはいけない相撲だよ」
優勝は2度。それを生かせなかった原因に足首のケガ。大きな体を支えるのに大きな負担がかかった。99年九州場所後に大関を陥落。その後、大関復帰を果たすが、再びその座を明け渡した。以後は幕内に残ったものの、かつての強さはなかった。
横綱を目前にしながら二度の大関陥落。そして43歳の急逝。波乱の人生だった。力の相撲は美学、というのが信条だったのだろう。通算777勝559敗13休。勝率5割8分2厘。好成績を残している。相手を投げ飛ばす「記憶に残る力士」だった。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)