トヨタ・アメリカ人女性常務の密輸事件で、医療用麻薬「オキシコドン」は、著名人らからも中毒者が出るなど米国内では社会問題になっている。服用すると、独特の恍惚感やリラックス感が得られるという。
麻薬取締法違反(輸入)の疑いで警視庁に逮捕されたジュリー・ハンプ容疑者(55)は、トヨタ初の女性役員として15年4月にアメリカから迎え入れられたばかりだ。
アメリカでは鎮痛剤として広く使われる
ハンプ容疑者は、米国内でもGMやペプシコの副社長を務めるなど出世コースを歩んできたが、それが日本に来て暗転してしまった。
報道などによると、ハンプ容疑者は6月11日、オキシコドンをアメリカから密輸入しようとした疑いが持たれている。東京税関でこの日、ハンプ容疑者にあてた国際宅配便の小包を調べると、底の方からオキシコドンの錠剤57錠が見つかった。送り先は東京都内のホテルになっており、ハンプ容疑者は18日にホテルにいるところを逮捕された。
その後の報道で、ハンプ容疑者が、違法だと知りながら、隠して輸入しようとした疑いが強まったとされた。オキシコドンは、おもちゃのネックレスやペンダントの小箱やポリ袋に分けて入れられ、小包の紙箱の底には39錠が敷き詰められていたからだ。輸入に当たっては、「ネックレス」とだけ申告していた。
ハンプ容疑者は、服用が必要な健康状態ではなかったといい、持病の治療のために取り寄せたのではないとみられている。調べに対しては、「麻薬を輸入したと思っていません」と容疑を否定し、その後は、「弁護士が来たら話す」と供述しているという。
オキシコドンは、アメリカでは鎮痛剤として広く使われているが、医師の処方箋が必要になる。乱用すれば中毒症状が現れ、歌手のマイケル・ジャクソンさんが09年に急死したのは、オキシコドンの乱用が原因ともされている。
厚労省「日本での乱用は聞いたことない」
ほかに、アメリカの著名人では、歌手のエルビス・プレスリーさんらもオキシコドンを常用していたと報じられている。
アヘンの成分から作られるオキシコドンは、砕いて吸うとヘロインのような恍惚感を得られるという。米国内の街中では、違法に売られており、医療目的以外に使っているアメリカ人は1600万人にも上るとの推計も出ている。若者は、友達と薬のやり取りをしたり、ネット上での売買にはまったりしているとされ、過剰摂取で死亡するケースも増えて大きな社会問題になっているようだ。
ハンプ容疑者が輸入しようとしたオキシコドンは、自分で使う目的ぐらいの分量だったという。仕事でストレスを感じて、服用によるリラックス感を得ようとした可能性もあるが、どのような目的なのかはナゾのままだ。
日本でオキシコドンが乱用されたケースがあるかについて、厚労省の監視指導・麻薬対策課では、「少なくともここ3年ぐらいは、まったく聞いたことがないですね」と話す。
日本では、がんの治療で強い痛みを抑える薬として使われているという。保険が適用されるのは、がんだけだからだ。使用量は増えており、日本でもポピュラーな鎮痛剤になりつつあるともした。しかし、今後、日本でも乱用が問題になるかについては否定的で、「医師が処方するのは必要量だけで、患者もそれがないと苦しみます。ですから、他の用途に使われるのは考えにくいと思います」と言っている。