テレビ局がインターネット配信に本腰を入れはじめている。フジテレビは、動画配信サービスの世界最大手で米国の「Netflix」(ネットフリックス)に、2015年秋から新番組を配信していく。
日本のテレビ局がNetflixでの番組配信を決めたのは初めて。テレビドラマに映画、アニメ、スポーツや音楽など、これからは時間や場所にとらわれずにインターネットで気軽に視聴するスタイルが主流になるのかもしれない。
約50か国、6200万人超の会員が視聴
インターネットの動画配信サービスは、これまでも作品ごとに料金を支払って視聴するタイプのサービスが少なくなかったが、最近注目されているのがHulu (フールー)やNetflixのような定額制の動画配信サービスだ。
米国で2007年からネットでの有料動画を配信しているNetflixは、パソコンでもスマートフォンでも、月額7.99ドル(約1000円)を支払えば、ドラマや映画、スポーツ、ドキュメンタリーなどが見たいときに見られることで大人気となった。
その便利さに加えて、独自のコンテンツ制作にも乗り出し、2013年には約100億円を投じて制作したドラマ「ハウス・オブ・カード」が、ネット配信の作品として初めて米放送業界で最も権威がある「エミー賞」を受賞したことで、提供されているコンテンツの質の高さでも評判を呼んだ。
海外展開にも力を入れ、会員は現在約50か国に6200万人超がいる。
その一方で、米国ではテレビのリモコンに「Netflixボタン」が付けられ、すでにテレビ番組の代わりにNetflixを視聴するのが一般的になっている。日本でも2015年に入って、東芝やパナソニックがNetflixボタン付きのテレビを発売しており、日本でもネットとテレビの融合に拍車がかかりそうだ。
そうしたなか、フジテレビは2015年秋にも、Netflixに海辺のシェアハウスに同居する若い男女6人の恋愛模様などを描いた人気番組「テラスハウス」の新作を提供すると、6月17日に発表した。
新作は全18話で、同日から住人(出演者)の募集が公式サイトで開始された。番組がNetflixを通じて海外にも配信され、住人の応募は海外からも受け付けるという。
フジテレビの大多亮常務は記者会見で、「Netflixが狙っている年齢層は10~20代。フジテレビが得意とする層と親和性がある」と説明。「テラスハウス」はYouTubeの公式動画が累計2億8000万回以上も再生されるなど、ネットとの親和性の高さも実証されているという。
日テレはHuluで配信
じつは民放で最初に、定額制の動画配信サービス事業に乗り出したのは日本テレビだった。2014年2月末に米国の定額制動画配信サービス「Hulu」の日本事業を譲り受けると発表。同年4月から、サービスを提供している。
Huluは、映画や海外ドラマなど約1万5000本の作品が月額933円(税別)で何本でも見られるサービスで、会員は20代後半~30代を中心に15年3月には100万人を突破した。
当初は他のテレビ局が番組の提供を拒み、視聴できる国内の番組が少ないのではないかと懸念されたが、現在ではNHKやTBS、テレビ東京などの在京キー局のすべてが番組を提供している。
また、NTTドコモが運営する「dTV」も定額制の動画配信サービスで、視聴できる作品は約12万にのぼり、テレビ局の提供も少なくない。テレビ朝日はIT大手のサイバーエージェントと合弁で動画配信会社を4月に設立。ネット配信への取り組みを強めている。
テレビ局がこうした番組のネット配信を積極化する背景には、若者などの「テレビ離れ」があるとされる。NHK放送文化研究所の調査によると、2004年11月に4時間1分だった1日あたりのテレビの視聴時間は14年には3時間42分に減った。
また、NHK 総合とEテレについて番組へのリーチ(接触)を調べたところ、リアルタイム(放送と同時)が92.8%、タイムシフト(録画などによる視聴)が50.7%、インターネットでの視聴が21.9%となった。リアルタイムでの接触が圧倒的だが、13~19歳ではリアルタイムに接触せずにタイムシフトやインターネットのみで接触するケースが増えていて、「人々のコンテンツやサービスへの接触の様相が変化していく兆しが見受けられた」としている。