えっ、砂糖にも課税? 厚労省懇談会の提言が波紋 日本の消費者はすでに高値で買わされているのに・・・

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   健康のため、酒とたばこは増税となり、さらには砂糖にも税金がかかるのか?厚生労働省の有識者懇談会が健康対策の一環として、2020年までにたばこ、酒、砂糖などへの課税強化を求める提言書をまとめたことが波紋を広げている。

   酒とたばこには酒税、たばこ税が課されているが、菓子や清涼飲料など食品に幅広く使われる砂糖にも課税されるとなると消費者への影響は大きい。しかも、砂糖は国内のサトウキビ農家などを保護するため、砂糖原料の輸入には「調整金」と呼ばれる制度があり、輸入すれば本当は安くすむ砂糖を、消費者は国策として高く買わされているのだ。

  • 農業政策と健康政策をどう整合させるのか
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タバコや酒と同じで健康にリスク

   提言書は厚労省の「保健医療2035」策定懇談会(座長・渋谷健司東大大学院医学系研究科教授)がまとめ、塩崎恭久厚労相に提出した。「2035年に日本を健康先進国にする」ため、中長期的な健康対策や医療制度改革が盛り込まれている。その中に「たばこ、アルコール、砂糖など健康リスクに対する課税、環境税を社会保障財源とすることも含め、あらゆる財源確保策を検討していくべきだ」と盛り込まれた。健康には有害な喫煙はもちろん、過度な飲酒、砂糖摂取を減らすことと、「安定した健康医療財源を確保する」という「一石二鳥」が狙いだ。

   現行のたばこ税と酒税は消費課税(個別間接税)のひとつで、たばこ1本約12円、酒は種類で異なるが、ビールなら1缶(350ミリリットル)で77円などとなっている。2015年度の政府予算の場合、国税収入は酒税が1兆3080億円で国税収入全体の2.2%、たばこ税は1兆461億円で1.8%を占めている。消費税の国税収入17兆1120億円(29.4%)に比べれば、税収に占める割合は小さいものの、たばこと酒を合わせると、揮発油(ガソリン)税(2兆7498億円、4.7%)に並ぶ貴重な税源だ。

   これに対して砂糖には別の負担があることを、まず確認しておこう。税金ということでは、砂糖は今のところ特別なものはなく、消費税が課税されるだけだ。しかし、私たちが飲食する菓子や清涼飲料などに含まれる砂糖に「調整金」と呼ばれる農家保護の資金が転嫁され、消費者が負担している。

最終的には消費者が負担

   独立行政法人・農畜産業振興機構によると、国内で消費する砂糖は、沖縄県・鹿児島県で栽培するサトウキビと北海道のテンサイ(砂糖大根、ビート)など国内原料で約4割を賄い、残る約6割は国内の製糖メーカーが海外から原料糖を輸入し、国内で生産している。ところが砂糖は内外価格差が大きく、国内で生産する砂糖は海外産の約2~5倍も高い。「砂糖生産が世界1位のブラジルと比較すると、日本は収穫面積で約47倍、生産量で約38倍もの差がある」という農業規模による効率の格差が響いているという。

   このため、政府は「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、国内に安く輸入される原料糖に調整金を課し、輸入業者である製糖メーカーに負担させている。

   政府はこの調整金を財源に国内のサトウキビ、テンサイ農家や製糖工場を支援するため交付金を支給しており、「輸入品は調整金の分だけ高くなり、国内産は交付金の分だけ安くなり、両者間のバランスがとれて国内価格が同じ水準になる」(同機構)という。実質的に高関税で国産品を守っているのと同じだが、この調整金は「最終的には砂糖の小売価格に転嫁され、消費者が負担している」(同)。

   農林水産省や業界団体は「砂糖は内外価格差が大きく、何もしなければ国内の砂糖生産は存続できない」と、説明する。「わが国の北と南で人々が暮らし、砂糖産業が成り立っているからこそ国土が守られている。私たちが砂糖を買うと、回りまわって沖縄県・鹿児島県や北海道の砂糖農家が守られることになる」というわけだ。

   日本の通商政策の焦点となっている環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉でも、砂糖(甘味資源作物)をコメ、麦、牛・豚肉、乳製品と並ぶ「重要5項目」の一つと位置付け、関税撤廃の例外とするよう強く求めているのも同じ理由からだ。

   TPPで砂糖を「聖域」扱いし、調整金をかけて農家を守るという農業政策上の要請と、健康のために新たに砂糖に課税して消費を抑えようという健康政策上の要請を、どう整合させるのか。負担する消費者への明快な説明が必要だ。

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