2013年12月には靖国神社を参拝するなど「対中強硬派」だとの評価もある安倍晋三首相が約6年ぶりに中国系メディアの単独インタビューを受け、中国に対する融和姿勢を強く打ち出した。
安保法案が中国との軍事衝突につながる危険性については「まったく想定し得ない」と断言し、日中関係発展のために「私も努力を積み重ねていきたい」と表明。戦後70年の節目に出す談話についても、「アジアの人々に対して被害を与えた」ことに対する「痛切な反省」と口にした。これまでの「力による現状変更は認められない」といった「牽制球」は登場せず、「地域の責任ある大国として発展していくことを望んでいる」と持ち上げるほどの「大サービス」ぶりだ。2度にわたる習近平国家主席との首脳会談で「雪解け」が進む日中関係を反映した形だ。
2度目の首脳会談、1度目よりも「だいぶ胸襟を開いた率直な意見交換」
安倍首相は2015年6月15日、香港に拠点を置くフェニックステレビのインタビューに応じた。日本の首相が中国系メディアの単独インタビューを受けるのは、09年4月に麻生太郎氏が国営中国中央テレビ(CCTV)のインタビューを受けて以来約6年ぶり。
冒頭、安保法案をきっかけに日中が軍事衝突する可能性について聞かれ、安倍首相は安保法制が
「戦争の惨禍を繰り返してはならないという意味において、国民の命と平和な暮らしを守るという責任を果たすための法制」
だと説明。そのうえで、
「ましてや、今おっしゃったようなご指摘のようなこと(軍事衝突)に、この法制によってなるということは、まったく想定し得ない」
と断言した。その背景のひとつが、2度にわたる習近平氏との首脳会談だ。15年4月にインドネシアで行われた2度目の会談では、海上や空での偶発的な衝突を避けるための「連絡メカニズム」早期運用に向けて合意したとして、
「お互いに、さらに両国関係をともに、発展させていくという思いは一緒。その両国の関係の発展に向けて、私も努力を積み重ねていきたいと思っている」
などと友好姿勢を強調した。
2度目の会談は14年11月の1度目に比べて「だいぶ胸襟を開いた率直な意見交換ができたと思う」と振り返り、習氏への印象を
「だいたい同じくらいの年だが、中国という13億の民に対する責任を常に感じておられるんだな、という印象を受けた」
と述べた。
「人間というものは、会うたびに理解が深まっていくのではないかと思う」
とも述べ、一度も首脳会談が実現しない韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領との距離感の差を印象づけた。