国立大に「国旗国歌を」と大臣要請 学長反応はスルー・困惑・議論する...

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   下村博文・文部科学相が国立大学の学長らに、入学式や卒業式での国旗掲揚、国歌斉唱を行うよう要請したことが波紋を広げている。

   大学への介入ではなく「お願い」であると強調しているが、学長らの反応は思わしくなく、一部の大学教授からは「事実上の強制」と反発する意見が出ている。

  • 下村文科相による国立大での国旗掲揚や国歌斉唱の要請が波紋
    下村文科相による国立大での国旗掲揚や国歌斉唱の要請が波紋
  • 下村文科相による国立大での国旗掲揚や国歌斉唱の要請が波紋

下村氏「適切に判断するようお願いする」

   下村氏は2015年6月16日、全国の国立大学86校の学長が集まった会議で、

「国旗掲揚や国歌斉唱が長年の慣行により広く国民に定着している。国旗および国歌に関する法律が施行されたこと(1999年施行の国旗国歌法)も踏まえ、国立大学におかれては適切に判断するようお願いする」

と述べた。

   会議後の取材では「最終的には各大学が判断すること。大学の自治、学問の自由に抵触することはまったくない」とし、あくまで「お願い」であることを強調した。

   小中高校では学習指導要綱で入学式や卒業式で国旗掲揚、国歌斉唱するよう指導することが定められているが、大学には規定はない。文科省のまとめでは15年3月の時点で予定を含め、今春の卒業式で国旗掲揚したのは74大学、国歌斉唱したのは14大学にとどまっている。

   こうした事情から安倍晋三首相は、4月9日の予算委員会で「国立大学の運営が税金で賄われていることを鑑みれば、教育基本法にのっとって正しく実施されるべきだ」と発言していた。この時、下村氏も「各大学で適切な対応が取られるよう要請したい」と述べていた経緯がある。

   ただ、今回の下村氏の要請に対し、大学側の反応は思わしくない。会議後、新聞各紙の取材に学長からは

「納税者に対して教育研究で貢献することが大学の責任だ。要請に従う必要はないと思う」(滋賀大・佐和隆光学長)
「かなり混乱するので、学内での議論は棚上げしたい」(琉球大・大城肇学長)
「下村氏は『適切に』と言っており、大学の自治を尊重してもらっていると考えている。伝統を踏まえて適切に議論する」(京都大・山極寿一学長)

といった意見があったと報じられている。滋賀大では国旗掲揚のみ行われ、琉球・京都大はいずれも行っていない。

一部教授は危機感

   要請には一部の大学教授からの反発も強まっている。教育学や憲法、思想などが専門の大学教授らで構成される「学問の自由を考える会」は、4月28日に要請に反対する声明を発表し、撤回するよう求めている。

   メンバーの内田樹・神戸女学院名誉教授は6月17日、ツイッターで「これが事実上の強制であることは大学人にとっては常識です」と指摘。

「文科省は国の方針に『イエスマン』的に忠実な大学には手厚く、独自の教育研究方針を掲げる大学には懲罰的に交付金を減らすという方針で大学をコントロールしようとしています」

と危機感を募らせた。法政大教授の山口二郎氏は17日にツイッターで、教育勅語に最敬礼しなかった明治期の思想家・内村鑑三を引き合いに

「学者たる者、須(すべから)く良心に従って行動すべし」

とした。

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