太田出版、賛否呼ぶ「元少年A」手記について正式コメント 「少年犯罪発生の背景の理解に役立つと確信」、遺族からの批判には答えず

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   1997年に神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗事件)を起こした「元少年A」(32)による手記「絶歌」の出版元である太田出版が2015年6月17日、約1800字の公式コメントを発表した。公式サイト上に岡聡代表取締役社長の名前で掲載された。

   手記は6月11日に発売されて以降、遺族への事前連絡がなかったことや、印税の行方、出版の是非などを巡り議論を巻き起こしている。

  • 「元少年A」による手記「絶歌」
    「元少年A」による手記「絶歌」
  • 「元少年A」による手記「絶歌」

「根底に社会が抱える共通する問題点が潜んでいるはず」

   コメントでは同書について、

「本書は、決して本人の弁解の書ではありません。いわんや猟奇殺人を再現したり、忌まわしい事件への興味をかき立てることを目的にしたものではありません。本書は、加害者本人の手で本人の内面を抉り出し、この犯罪が起きた原因について本人自身の言葉で描いたものです」

と説明する。

   「元少年A」については、「内面的な乱れ」を抱えながらも事件が起きるまでは「どこにでもいる普通の少年」であったと指摘。その上で

「彼が抱えていた衝動は、彼だけのものではなく、むしろ少年期に普遍的なものだと思います」「その根底には社会が抱える共通する問題点が潜んでいるはずです」

との見方を示して、社会は同様の犯罪を起こさせないため、そこに何があったのかを見つめて考える必要があると強調した。

   さらに「元少年A」が国のシステムの元で社会復帰したことに言及し、「法により生きることになり、社会復帰を果たした彼は、社会が少年犯罪を考えるために自らの体験を社会に提出する義務もあると思います」とも指摘した。

   手記の内容については「今に至るも彼自身が抱える幼さや考えの甘さもあります」と見るが、「しかしそれをも含めて、加害者の考えをさらけ出すことには深刻な少年犯罪を考える上で大きな社会的意味があると考え、最終的に出版に踏み切りました」と出版の意義を主張した。

遺族は回収要請するも「出版を継続」

   遺族に事前連絡せず、了解を得ぬまま出版したことについては「事件をようやく忘れようとしている遺族の心を乱すもの」という批判が多く出ている。同社にもそうした声は届いているそうで「重く受け止めている」という。

   しかし、それでもなお出版を断念しえなかった。その背景についてコメントでは、

「出版は出版する者自身がその責任において決定すべきものだと考えます。出版の可否を自らの判断以外に委ねるということはむしろ出版者としての責任回避、責任転嫁につながります」

と説明。出版後には批判の声だけでなく、肯定的な意見も届いているそうで、

「私たちは、出版を継続し、本書の内容が多くの方に読まれることにより、少年犯罪発生の背景を理解することに役立つと確信しております。ご遺族にも出版の意義をご理解いただけるよう努力していくつもりです」

と結んだ。

   出版後には、殺害された土師淳君(当時11)の父親と代理人弁護士が同社へ抗議文を送付。速やかな回収を求めていた。コメントはそのことについてはとくに言及しておらず、引き続き販売を続けるようだ。

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