いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の発言が、日韓の外交当局者を困惑させている。
朴大統領は米ワシントン・ポスト紙に「相当な進展(considerable progress)」があり、交渉は「最終段階」だと述べたのだが、韓国メディアからは「進展」の内容が聞こえてこず、日本側も「発言の趣旨が明らかではないのでコメントは控えたい」と、そっけない。本当に「進展」はあったのか。日中の距離が近づくなか、朴大統領の外交姿勢をめぐっては「対日強硬姿勢が韓国の孤立を招いた」といった批判も根強い。中東呼吸器症候群(MERS)の流行が支持率の低下に追い打ちをかけており、根拠の薄い発言を「アドバルーン」にして事態の打開を図った可能性もある。
「進展」の具体的内容は「水面下の議論がある」と明らかにせず
安倍晋三首相と朴大統領の首脳会談はいまだに実現しておらず、日本側は「対話のドアは常にオープン」と繰り返す一方で、韓国側は従軍慰安婦問題をめぐる謝罪が会談の前提だと主張し続けている。
2015年6月11日に米ワシントン・ポスト紙が掲載したインタビューでは、朴大統領は安倍首相と会談する予定があるか聞かれ、こう答えた。
「安倍首相とは、これまで何度も関わりがあった。従軍慰安婦の問題では相当な進展があり、交渉は最終段階だ。日韓国交正常化50周年は非常に有意義なものになると期待している」
「進展」の具体的な内容については、
「明らかに水面下の議論があるので、議論の内容については公表を控えたい」
として言及を避けたが、安倍首相が慰安婦に謝罪する必要性については、
「被害者は52人しか生存していない。さらに亡くなる人が増える前に、日本には(元慰安婦女性の)傷をいやし、名誉をもたらす義務がある」
と述べ、「謝罪」という単語を直接口にするのは避けた。