国連平和維持活動(PKO)の隊員が、支援の見返りとして現地の女性と性的関係を持っていた――。国連がこんな報告書をまとめたと報じられ、ネット上で、驚きの声が上がっている。
中米のハイチでは、2010年に大地震が襲って、30万人以上が亡くなる事態になった。その後、各国からPKO隊員が派遣されてきたが、15年5月15日付の報告書によると、そんな中でも「性的搾取」が続けられていた。
宝石やドレスなどを見返りにもらう女性も
国連が14年に調査したところ、ハイチで229人の女性と2人の男性が支援物資を求めてPKO隊員と性交渉していたと告白した。このうち、3分の1以上が18歳未満だったそうだ。もちろん、飢えや病気から食料や薬などを受け取るケースも多かった。しかし、中には、宝石やドレス、テレビやパソコンなど、支援物資とは思えない高価な品物を見返りとして得ていた女性らもいたという。
また、アフリカのリベリアでは、18~30歳の女性489人のうち4分の1以上で支援の見返りとして性的交渉があったと答えていた。
ほかに、同じアフリカのコンゴや南スーダンでも、内紛が続く中でこうした取引が行われていたと指摘されている。国連では、08~13年の6年間で「性的搾取」が480件に上ると報告した。
こうしたPKOの実態が報じられると、ネット上では、「聞いて呆れる」「いったいどこの国の奴だ?」と怒りの声が上がった。これでは困っているところに物資が行き届かないなどとして、「きちんと調査して、どこの国の部隊か公表すべき」「従軍慰安婦とどこが違うんだ?厳しく罰するべきだ!」といった指摘が出ていた。
必ずしもPKO隊員ではないが、フランス軍の部隊が中央アフリカで、13~14年にかけて同様な「性的搾取」をしていたとは報じられている。しかし、国連の報告書では、「性交渉の取引は常態化している」としながらも、関与した隊員の国籍や人数は明らかにされていない模様だ。
内閣府など「自衛隊員にそのようなことはないと認識」
日本は、1992年からPKO法による自衛隊派遣を始め、これまでにカンボジアや東ティモール、ハイチなどに延べ27回も隊員を送っている。現在は、11年から派遣している南スーダンで、約350人が道路などインフラ整備の活動を続けている。
日本でも、かつて週刊誌で似たような自衛隊員の疑惑が報じられたことがあった。しかし、政府は、「性的搾取」などがあったことは認めていない。内閣府のPKO事務局や外務省の国際平和協力室では、取材に対し、「そのようなことはないと認識しています」と答えた。
とはいえ、どこの国でも起きえる問題だと、国連職員などとしてPKOの活動に参加したり、共に活動したりした経験がある立教大の米川正子特任准教授は言う。
「コンゴでは2005年に、南アフリカ軍などの兵士が食料との交換として少女らに1~3ドルを支払って性的交渉をしていたと報じられたことがあります。1990年代前半にPKO活動の数が急増して以降、この20年間に、同様な問題が様々なPKOの受け入れ国で起きています。犠牲者は、怖くて告発できないケースもあり、実際には、報告以上にあるでしょうね。隊員は金持ちだと思って寄ってくる女性も多く、駐留地には買春産業が栄えるとも言います。現地で問題を起こした隊員が母国に戻っても罪に問われるのはまれで、その後、違う赴任地で問題を起こすという悪循環が続いています。隊員はこうした行為を免除されてしまっており、隊員の研修も大事ですが、厳しく処罰しないとこれからも問題が続くでしょう」