観光庁が2015年6月9日に公表した「観光白書」によれば、全国の宿泊施設の稼働率が軒並み上昇し、東京と大阪では2014年に稼働率が81%を超えた。
外国人観光客が増えていることが主な原因だ。稼働率が80%を超えると、ホテルの予約が取れにくくなる。今や、お盆や年末年始の予約ともなれば半年前に予約しなければ間に合わない状況で、部屋代もディスカウントが影を潜め、急激に「高騰」することになってしまった。
ディスカウントしていた部屋が「適正価格」に
「観光白書」によれば、14年の国内旅行者は微減だったものの、訪日外国人旅行者数は前年の13年を29.4%上回り1341 万人と2年連続で過去最高を更新した。これによってトータルでは延べ宿泊者数は同1.4%増の4億7232万人泊と増加。外国人延べ宿泊者数は同33.8%増の4482 万人泊で、訪日客の消費額は2兆278億円と過去最高だった。
訪日客の増加は円安や訪日ビザの条件緩和などが影響していて、日本食や買い物を楽しむために訪れるのだそうだが、これによって活況を呈することになったのがホテル業界だ。東京都と大阪府の客室稼働率の上昇は顕著で、11年の東京都での稼働率が68.0%、大阪府が68.2%だったのに対し、14 年はそれぞれ81.5%、81.4%となった。そしてホテル代も「高騰」している。都内に限って言えば、夜に空き部屋をディスカウントして貸し出したりもしていたが、そうしたことも影を潜めた。日経新聞の15年2月13日付けの記事によれば、全国600ホテルを対象に集計した14年の平均客室単価は前年を8・2%上回った。都内では帝国ホテル東京が同8・9%上昇し08年以来となる3万円台を回復した。大阪ではホテルグランヴィア大阪が同12%上昇した。
楽天トラベルによれば、東京や大阪は宿泊客が増えたことによって、従来なら価格を下げなければ売れなかった部屋が「適正な価格」で売れるようになり高単価傾向が続いている。また、早期に予約しなければ宿泊できなくなってしまった、という。ビジネスホテルなどでも1週間前が普通になっていて、国内旅行では90日前に、お盆や年末年始だと半年前に予約しなければ厳しい状態だと説明した。そしてホテルの予約が増えているのは都心だけの傾向ではなく、これまであまり動かなかった地方でも起こっていることなのだそうだ。こうしたホテル業界の活況はこれからも続いていくという。
既存の4ホテルのうち3棟の稼働率が100%を超えた
というのも、訪日客の増加がさらに進むのは明らかで、15年の訪日客数は1月が前年比29.1%増、2月が同57.6%増、3月が同45.3%増(推計:観光局調べ)と増えている。また、国が地方創生事業として「ふるさと旅行券」を15年4月から発売したが、これを使った注文が楽天トラベルに殺到している。指定された地域への旅費が大幅に割り引かれるというもので、これによって国内旅行客も増えていくのだという。
さて、稼働率が80%を超えた東京と大阪だが、「ホテル不足なのではないか」と心配する声も挙がっている。ただし、ホテルの建設は20年の東京オリンピックを見据えいろいろ計画されていて、西武ホールディングスは16年に東京都千代田区に「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」をオープンし、ホテルオークラも本館を建て替えて19年に開業する。
総合都市開発のアパグループは東京都新宿区に5棟目となるホテル「アパホテル東新宿 歌舞伎町II」(14階建て、129室)を17年2月に開業する予定だ。既存の4ホテルのうち3ホテルの稼働率が100%を超えたからで、「更なる需要の獲得を目指した開業となる」と説明している。