原発事故前の水準に回復したのは中国電と沖縄電だけ
ひと息ついた感じの電力株だが、「買い」の材料は少なくない。燃料安などの収益改善への見通しや、政府が2030年の原発比率を20~22%とする電源構成案を決めたこと、また九州電力の川内原発1、2号機、関西電力高浜原発3、4号機に続き、5月に原子力規制委員会が四国電力伊方原発3号機の安全対策を事実上の「合格」としたこともある。
原発再稼働への期待が「買い」を呼んでいるようだが、そんな原発は不安材料でもある。
電力株は急騰したものの、4年前の原発事故前の水準を回復しているのは、原発依存度が低い中国電力とゼロの沖縄電力だけだ。
そんな電力株を、いったい誰が買っているのだろうか。「個人買いVS機関投資家の売り」の構図と伝えた日本経済新聞(2015年5月28日付)をはじめ、「買い」の主体が個人投資家とみる向きは少なくない。値動きがいいので、「短期筋の個人投資家、デイトレーダーの買いが株価を押し上げているようです」(証券アナリスト)という。
しかし、ある個人投資家は「再稼働が現実味を帯びてきたのはわかりますが、一方ですべての原発が動かせるわけではないですよね。廃炉費用もそうですが、燃料費だっていまはいいですが不透明ですよね。そんなことを考えると、とても怖くて買いたいとは思いません」と話す。
「デイトレはともかく、おそらくそんな個人投資家がほとんどじゃないですか」と、個人投資家の「買い」報道を懐疑的にみている。電力株を買い支えているのは、やはり年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。「株価を下げたくない、政府の思惑もあるでしょうからね」という。