電車の運転手は「運転中に水も飲めない」、肉体的にはかなりツラい重労働ではないかと、インターネットで話題になっている。
連日の好天に恵まれ、2015年5月は全国的に記録的な暑さに見舞われたことから、熱中症への心配が高まっていた。
JR東海で、運転手も車掌も脱水症状に・・・
2015年5月25日昼過ぎ、JR東海道線の幸田-相見間で、大垣発豊橋行き上り新快速列車の男性運転士(28)が運転中に手足のしびれを感じて列車を緊急停止した。運転士は病院に搬送。命に別条はなかったが、熱中症とみられる脱水症状を起こしていたという。
その運転士は、乗務開始前の9時の点呼では異常はなく、豊橋‐名古屋で列車を運転。休憩をはさみ、正午すぎに名古屋駅からこの列車に乗務した。
じつは、同じ列車に乗務していた男性車掌(35)も体調を崩していた。この車掌は同日11時前に出勤。やはり点呼時には異常はなく、大垣駅から新快速列車に乗務。体調不良のため運転士が交代した後も乗務を続けたが、「蒲郡駅(豊橋駅の一つ前)あたりから手足のしびれがあったようで、終点の豊橋到着後に(車掌から)話があり、大事をとってすぐに救急車で病院に搬送しました」と、JR東海は話す。
こうしたことから、インターネットには運転士や車掌がふだんから十分に水分補給ができない状況にあるのではないか、と心配する声が寄せられている。
「ヘンなクレームに過敏になるからだよ。。。水分補給は当たり前でしょ」
「水分補給は生命に直結する。断りなしに何処でも摂れるようになりつつあるのに...」
「そもそもが管理しすぎでは? 安全運行のためにどうするかだろ」
と、運転士らに同情的な声が少なくない。
またJRの元運転士だろうか、
「自分が運転士の頃は、もちろん運転中に飲むことは考えられないが、水筒と座布団が運転士や機関士の必須アイテムだった。運転士がきちんと場をわきまえることで運転しやすい環境をつくっていた」
と書き込んでいる。
JR東海は、運転士と車掌が、同じように熱中症とみられる脱水症状を起こしていたことについて、「昼に安城駅近くの踏切で、レールに挟まった買い物カートとの接触事故がありました」といい、これが原因とみている。
この事故で、カートを押していた人は避難して無事だったが、運転士は車外で車両の安全確認などに追われた。また車掌はその後に、脱水症状の運転士を運転席から運び出すのを手伝ったり、車外で救急隊員に状況説明したりしており、こうした「車外での活動が響いたのではないか」と話す。
小田急電鉄は「こまめに水分補給するよう指導」
JR東海は、熱中症対策として運転士に休憩中や待機中の水分補給を呼びかけていた。ただ、乗務中に水分を補給するには、東海総合指令所の了解が必要だったり、乗務後に飲んだ時間や場所、乗客からの苦情の有無などを業務報告書に記載して提出することを義務づけたりしていて、運転士にとってはそれらが面倒でこまめな水分補給ができなかったようだ。
そうした事情もあって、JR東海は規定にある報告義務を見直し、2015年6月1日から報告を不要にした。「乗務員の体調管理を考え、より水分補給しやすい運用に改めた」と説明している。
では、JR東海以外はどのように対応しているのだろうか――。JR東日本では、「水分補給についてはお客様が不快にならないように配慮すれば、自由に摂ってかまいませんし、報告の必要もありません」という。
私鉄では、京王電鉄が「当社ではそもそも(水分補給についての)規定がありませんから、報告の必要もありませんし、運転中にハンドルから手を離すと運転できないようになっているので、(運転中に)飲むこともできせん。個人の判断になりますが、健康管理、体調維持の点では多くの運転士が折り返し地点などで水分補給するように心がけています」と話す。
また、小田急電鉄も規定は設けていない。むしろ、「適宜こまめに水分補給してくださいと指導しています。5月から10月は熱中症のリスクが高まりますから、カバンに飲料水を入れて乗り込むことも認めています。もちろん運転中はダメですし、お客様に不快感を与えないようにすることが前提です」としている。
一方、路線バスの運転士の水分補給について、東京バス協会は、事業者ごとに規定が異なるので一概にいえないとしたうえで、バス会社は「終点や折り返し点などで、お客様の目の届かないところでの軽食や水分補給はやむなしと考えているようです」と話している。