銀行口座への紐付けは「任意」
マイナンバーの経済効果を約2.7兆円とはじく試算もあるが、これは民間への利用範囲の拡大が前提。政府は銀行口座とマイナンバーの紐付けを可能にする改正法を今国会に提出しているが、口座への紐付けは「任意」。大手行幹部は「10億件もある口座と番号を任意で紐付けることなど不可能だ」と嘆く。
少子高齢化が進む中、行政サービスの見直しを通じた行政費用の抑制は不可欠。そこにマイナンバーを活用しようというのがそもそもの狙いだったはず。銀行口座の紐付けができなければ、資産の正確な把握は困難なままで、税や年金保険料の徴収漏れを防ぐ効果も疑わしくなる。
マイナンバーの導入費用は約3000億円。一方で、どれだけの財政メリットがあるかの費用対効果を政府は出せていない。
「IT投資自体が自己目的化した無駄遣い」
「費用対効果が設定されていないのは行政効率化という本来の目的に鑑みればあり得ない」
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が6月1日にまとめた建議には、マイナンバーを含むIT予算について、財務省の本音ともとれる厳しい文言が並んだ。
政府は、マイナンバー制度自体は予定通り2016年1月に開始する方針だが、年金分野での利用については開始時期を送らせざるをえないとの判断に傾いている。参院で審議中のマイナンバーの利用範囲を広げる改正法案は今国会で成立するとの見方が支配的だが、野党側はマイナンバーの管理体制を追及していく構えで、審議の遅れは避けられそうにない。