2016年1月にスタートするマイナンバーの雲行きが怪しくなってきた。
国民への周知不足に加え、政府内でも制度の効果を疑問視する声がくすぶっていたが、日本年金機構のシステムから大量の個人情報が流出して個人情報のずさんな管理実態が明らかになったことで、国民の理解はさらに遠のきそうだ。
企業に様々な負担
「期せずしてマイナンバーの宣伝になってしまった」
マイナンバーは年金業務にも活用するため、今回の年金機構の失態は皮肉にもマイナンバーを広く世間に周知する形になったことで、政府内ではこんな声が漏れた。
マイナンバーの周知不足は深刻だ。帝国データバンクが全国2万超の企業を対象に2015年4月に実施した調査では、制度への対応を「完了した」企業はわずか0.4%にとどまった。
マイナンバーの理解が広がらない背景には、その効果が不透明なうえに、企業に様々な負担を求めていることがある。源泉徴収票や厚生年金の被保険者資格取得届などの法定調書には全てマイナンバーの記載が必要になるため、企業は従業員や家族の番号を正確に集めなければならない。本人確認や適切な番号管理の義務も課され、事務コストやデータの保護対策などの費用負担は避けられない。
煩雑な行政手続きの簡素化も怪しい。年金の受給開始時や所得税の確定申告時などは、これまで添付が必要だった住民票が不要になる。ただ、民間がマイナンバーを利用するのは禁じられているため、引っ越し時にはこれまで通り電力・ガス会社など複数の機関で手続きをしなければならず、政府が目指す「引っ越しワンストップ」は実現しない。