「高値づかみにならないか」との声も
ただ、JT自販機事業買収にはアサヒ飲料、キリンビバレッジも手を挙げ、激しい争奪戦を繰り広げた結果、買収額は対象のJT2子会社の年商合計1600億円に匹敵する規模に膨らみ、「高値づかみにならないか」との声が業界内では聞かれる。「ライバルに奪われるマイナスと天秤にかけて決断した防衛的買収」(全国紙経済部デスク)との指摘もある。もちろん、買収できなかった他社は、それ以上にいばらの道が待ち構えるのは言うまでもない。
一方のJTは、飲料市場の厳しい競争環境の中では生き残りが難しいと判断したものだ。民営化から3年後の1988年に飲料事業に進出。たばこ自販機の設置ノウハウと、たばこで培った味や香料の技術を生かし、多角化を進めるのが目的だったが、「飲料市場は成熟しており、(各社の)事業規模が優劣を決める状況。商品サイクルも短く、当社にとって厳しい事業環境だった」(2月、大久保憲朗副社長)と語るように、収益の確保に苦しんできた。グループの売り上げに占める飲料事業の割合は1割に満たず、「将来性が見込めない」として今年2月に事業撤退を表明していた。
今回の売却で、JTは不振事業を切り離せる上に、1500億円が入ることで、主力事業への重点投資が可能になる。「たばこ事業に加え、加工食品、医薬事業に積極的に取り組んでいく」(大久保副社長)と語るのも、あながち強がりではなさそうだ。