TPP交渉とも絡む
日本の通商政策の焦点となっている環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉で、日本はこれまで、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖(甘味資源作物)を「重要5項目」と位置付け、関税撤廃の例外とするよう強く求めている。乳製品の中には、もちろんバターや脱脂粉乳が含まれている。
国内のバターの需要は年間約8万トンで、日本は世界貿易機関(WTO)の国際協定に基づき、「カレントアクセス輸入」と呼ばれる国際約束数量(年間7459トン)を毎年、輸入することになっている。2015年度の需要は7万4700トン、国内生産量は6万4800トンとなる見通し。農水省は今回の1万トンの追加輸入で「需要予測を大幅に上回る量を確保する」という。
もしも、政府がバターの関税を下げて自由貿易とすれば、海外から安価なバターが輸入され、バターの品不足は解消されるだろう。しかし、日本の酪農が壊滅的な打撃を受け、バターやチーズだけでなく、私たちが飲む日々の牛乳が外国産のロングライフミルクなどになり、新鮮な牛乳が飲めなくなる可能性さえある。
大詰めを迎えるTPP交渉で乳製品は、種類に応じて一定量を低関税か無関税で輸入する特別枠の設定が検討されている。しかし、酪農王国・ニュージーランドはバターなどの乳製品について大幅な市場開放を求めており、調整がスムーズに進むかは不透明だ。
今回のバター不足騒動は、国内の酪農家の減少問題だけでなく、TPP交渉とも絡む私たちの食生活に密接にかかわる大きな問題といえる。