VIP扱いでカムバック
田中はヤンキースと「7年、161億円」と契約している。超大物の数字とあって球団の心遣いも半端ではなかった。
「ヤンキースの財産ですからね。ファンの支持も高い。黒田博樹が広島に復帰して抜けただけに、田中にかけられる期待は大変大きい。球団も田中なくして優勝はない、と考えている。まさのVIP扱いでカムバックを支援していました」
地元ニューヨークの日本人記者はそう語っている。
しかし、振り返ると、田中はこの2年、綱渡り状態で投げているのだ。昨年夏にも右ヒジ痛で2か月ほど戦列を離れた。そして今シーズンだ。
だから「さすが」と復帰登板に喜ぶ声がある半面、投げられたことで「ひとまず安心」との声、さらに「このまま大丈夫なのか」と再発を危ぶむ見方もある。
何人もの日本人投手が大リーグで投げては手術する例があるからで、当然の不安視なのだ。レンジャースのダルビッシュ有が今年手術、長期離脱の最中にある。
田中はこれからも右腕と相談しながら登板することになる。
「マウンドに立ち続けたい。それが自分の仕事だから。(復帰戦の投球を)次につなげたい」
ジラルディ監督はそんな田中にさらに期待を寄せている。
「6イニング投げられば、と思っていた。それが7イニングだ。期待以上の内容だった。スピードもあったし、これからが楽しみ」
グッドニュースに摩天楼の街は沸いた。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)