トヨタの権力継承、最終コーナーに 豊田章一郎名誉会長が「東和不動産」会長ポストを章男氏に禅譲

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

「現役引退」を印象づける

   ドンこと章一郎氏は東和不動産だけでなく、トヨタグループの「長男坊」的な部品会社、デンソーの取締役も6月に退く。章一郎氏は実に1964年から半世紀超、デンソー取締役を務めており、その退任は少なからぬ驚きを持って受け止められた。さらには、同じくグループ部品会社の雄、アイシン精機の監査役も6月に退く。これは、グループ主要企業の経営から一斉に距離を置くことを意味する。

   それだけではなく、章一郎氏は産学官一体で科学技術の研究を進める「科学技術交流財団」(愛知県豊田市)の会長職も6月に退く。この財団は中部財界が中心になって1994年に設立した団体で、章一郎氏は2004年から会長に就いていた。後任は章男氏ではなく、トヨタでかつて副社長をつとめた人物だが、章一郎氏の「現役引退」を印象づける人事と受け止められている。

   トヨタ本体の社長に章男氏が就任したのは2009年で、早くも今年6月で丸6年となる。この間、章男氏の量より質を追うかのごとき「もっといいクルマを」とのかけ声のもと、「前任の渡辺捷昭社長時代の無防備な拡張路線の失敗から利益重視路線で復活」とのイメージ形成に成功したと言っていい。

   ただ、「グループの人事は章一郎さんが決めており、章男さんは口を出せない」との指摘も根強い。章一郎氏としては、昨年春に日経新聞に「私の履歴書」も書いて「思い残すことはない」境地を演出したのに、だ。

   さて、本当に権力は継承されたのか。親子間の話だけに部外者に真相は不明だが、「継承」を演出しようとしていることだけは間違いない。

1 2
姉妹サイト