東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が派遣社員について書いたコラムが物議をかもしている。「みんな正社員を望んでいるはず」というイメージについて、総務省の調査をもとに、「実はそうでもない」と否定しているものだ。
これに対し、法政大の教授が、数値の見方に間違いがあるとして「端的に誤り」と真っ向から反論。「正社員を望んでいる派遣」とみられる人からも、ネット上で反発の声が上がっている。
法政大教授「これは派遣労働者の結果ではなく、非正規全体の結果」
議論の的になっているのが、長谷川氏が週刊ポスト(2015年6月12日号)に寄せたコラム「労働者派遣法改正 派遣の是非より正社員との差別撤廃目指せ」だ。
自分に合わせた多様な働き方を選んだり、たまたま非正規雇用になったりしても、「正社員と差別されず労働が適正に評価される。本来、政策はそんな『同一労働・同一賃金』『均等・均衡処遇』の方向を目指すべきだ」と提言する内容だ。
この中で長谷川氏は
「派遣というと『みんな正社員を望んでいるはず』と思いがちだが、実はそうでもない」
と主張する。総務省が5月12日に発表した統計「労働力調査」(15年1~3月期)を根拠に、派遣を選んだ理由について、
「『正規の仕事がないから』という理由は2割弱にとどまっている」
とした。
一方、この部分が「端的に誤り」と指摘したのは、法政大教授の上西充子氏だ。6月3日日の一連のツイッターで、長谷川氏の引いた労働力調査の結果について、「これは派遣労働者の結果ではなく、非正規全体の結果」などと指摘した。
長谷川氏はコラムの中で、根拠にした数値が同調査のどの部分かは明確にしていないが、「現職の雇用形態(非正規の職員・従業員)についた主な理由」のことだとみられる。確かに、この中で「正規の職員・従業員の仕事がないから」は17.6%で、長谷川氏の言う「2割弱」と重なる。
しかし、この回答は上西氏の指摘するように、派遣社員だけでなく、パート・アルバイトや契約社員、嘱託などを含めたものだ。