東京五輪の新国立競技場、迷走中 工費負担めぐり国と都が大バトル

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   2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設をめぐり、国と東京都のバトルが勃発している。

   そもそも一番の「売り」だったはずの開閉式屋根が間に合わないなど設計が大きく変わる見通しになっている。加えて、膨らむ総工費の一部として500億円を都が負担するよう国が求めたのに対し、都は根拠を明確に示すよう迫っているのだ。「五輪の顔」はどこへいくのか。

  • 「五輪の顔」はどこへいくのか(画像は国立競技場)
    「五輪の顔」はどこへいくのか(画像は国立競技場)
  • 「五輪の顔」はどこへいくのか(画像は国立競技場)

五輪前年のワールドカップ会場

   2015年5月18日、下村博文・文部科学相は都庁に舛添要一都知事を訪ねた。

「東京のど真ん中がスポーツ振興の場になる。費用の一部をぜひ負担していただきたい」
「全体のコストがどうなっているのか。500億円もの税金を都民に払えと言う以上、きちんとした根拠がないといけない」

   関係者によると、そんな会話が交わされ、話し合いは平行線をたどったという。

   新国立競技場建設に向けた流れを振り返っておこう。東京五輪招致活動段階の2012年11月15日、国際デザイン・コンクールで、英国の建築設計事務所「ザハ・ハディド・アーキテクト」が最優秀賞に決定。流線型のラインが近未来を予感させる斬新なデザインと8万人収容・開閉式屋根が特徴で、総工費は解体費を除いて1300億円程度とされた。

   ところが五輪開催決定後の2013年10月、下村文科相は総工費が3000億円に膨らむとの試算を明らかにした上で、「あまりにも膨大だ。縮小する方向で検討する必要がある」として、設計を見直す考えを示した。

   これを受け同11月、新競技場の事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)はデザインを見直して総工費を1852億円に圧縮した。それでも当初想定の1300億円を上回っているが、全天候型にする開閉式屋根の設置方針は維持。さらに文科省の見直し作業の結果、2014年1月時点で総工費1625億円とされ、これが現時点の「公式数字」だ。

   この後、解体作業に入るのだが、入札不調で業者選定は難航。2014年12月に3回目の入札でやっと決まり、2015年1月、予定から半年遅く着工に漕ぎ着け、9月末までに完了する見通しだ。だが、この遅れで工期の短縮が必要になった。というのも、五輪前年の2019年にラグビーのワールドカップが開かれ、新国立競技場はその主会場にもなるため、時間がないのだ。

   かくて5月18日、文科省は、競技場のフィールド部分を覆う開閉式の屋根の設置を大会終了後に先延ばしし、コスト削減策として可動式の観客席約1万5000席分を仮設にすることを検討していると発表するとともに、冒頭の下村・舛添会談となった。この際、下村文科相は、資材の高騰などで競技場の総工費が1625億円からさらに膨らむ見通しだと説明したという。文科省は総工費を修正し、6月下旬までに概算額をまとめる方針を示している。

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