「お客様のニーズ」を取り込み、集客力を高める狙い
そもそも牛丼チェーンの「吉野家」といえば、1980年代には「牛丼一筋80年」のテレビCMで話題をさらい、これまで「うまい、安い、早い」のキャッチフレーズで売ってきたことで知られる。
吉野家に「高級路線」に切り替えたのか、聞いてみると、「そのように思われるかもしれませんが、そうではありません。いまでも、『うまい、安い、早い』のモットーを大事にしています」と話す。
とはいえ、吉野家は最近変わりつつある。冬季限定商品として大ヒットした「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」は、「うまい、安い、ゆっくり」という新たなコンセプトに基づいたメニュー。価格はともに並盛580円とやや高めで、「安い」「早い」からの転換を思わせる。
2015年5月21日には、「うまい、安い、早い」に「健康志向をプラスした」(吉野家)、ごはんに野菜しか載っていない「ベジ丼」(530円)を発売。「安さ」以外の「付加価値」が求められるようになっていることに対応した。
さらには、「吉呑み」もそうだ。「吉呑み」は夜間に客足が鈍るビジネス街の店舗で遊休スペースとなっていた2階部分を有効活用。仕事帰りのビジネスマンなどの「ちょい飲み」ニーズを取り入れることで、夜間帯の売り上げ増を狙った。
現在、「吉呑み」を展開する店舗は122か店、簡易版の「吉呑みチョイ」は104か店(いずれも、2015年5月23日現在)に拡大中で、生ビールやおつまみが既存の居酒屋より「安い」と評判。長居できそうな店内の雰囲気はお客の回転率が下がる懸念があるが、「売り上げや客数で、(吉呑みの実施店のほうが)1.2倍ほど多い」という。
吉野家は、「たとえば早く食べたい人もいれば、ゆっくり味わいたい人もいます。そういったお客様のニーズに、できる限り応えていきたいと考えています」と説明。それにより、集客力をつけていくようだ。