東芝の不適切会計が発覚し、決算発表ができないばかりか、株主総会の開催のめども立たない異常な事態になっている。インフラ関連工事でまず火の手が上がり、他の事業分野にも次々に波及し、第三者委員会による調査を進めているが、インフラ関連工事だけで既に500億円を上回る営業利益が底上げされていたことが判明するなど、全容解明にはなお時間がかかりそうだ。経営責任を問う声も日に日に強まっている。
2015年4月3日に「インフラ関連工事の会計処理で調査を必要とする事項が判明した」と発表し、室町正志会長をトップにした特別調査委員会を設置した。
業績向上を求める社内での重圧が影響?
この段階で問題視されたのが、インフラ関連工事で適用される「工事進行基準」という会計手法だ。一度に売買できる通常の商品取引と違い、インフラ関連工事は着工から完成まで数年にまたがるケースが多い。このため工事の受注額(売上額)や原価を一括で会計処理するのではなく、複数年度に分散して計上するのが「工事進行基準」の特徴だ。東芝は同基準を適用する際、工事の原価総額を過少に見積もる一方、売上高を前倒しで計上し、利益を過剰に計上(あるいは損失を過少に計上)していた。
これまでの調査では、2012年3月期~2014年3月期までの3年間で、インフラ関連工事9件について原価総額を過少に見積もり、累計で営業利益を500億円強底上げしていたことが判明。次世代電力計である「スマートメーター」や高速道路のETC(電子料金収受システム)など新規事業が目立ち、東芝社内では「原価総額を見積もるのが難しかった」との見方も出ている。業績向上を求める社内での重圧が、不適切な会計処理の背景にあるとの観測もある。