対戦相手の顔面を崩壊させたとして話題になった女子プロレスラーの世IV虎(よしこ)選手(21)の引退が発表されると、所属する団体女子プロレス団体「スターダム」への批判がネット上で沸騰した。世IV虎選手はまだ若いし、リングで起きたことはリング上で決着させるべきであり、それを支援するのが所属団体のはずだ、との理屈からだ。
「スターダム」は世IV虎選手に対し団体を離れるか、引退かを迫り、同団体の旗揚げから参加していた世IV虎選手は「スターダム」以外でプロレスをするつもりはないと引退を決めたのだという。
「 プロレスを見に来ている人を馬鹿にしすぎやしませんか?」
問題となった試合は2015年2月22日に東京・後楽園ホールで行われたタイトルマッチ。挑戦者の安川惡斗(やすかわ・あくと)選手(28)の顔を執拗に殴り、蹴り上げもした。惡斗選手の顔面が崩壊し、頬と鼻、左眼窩底を骨折したほか両目の網膜しんとう症で24日間入院という重傷を負わせた。これによって世IV虎選手は王座をはく奪され、無期限出場停止処分を受けた。
「スターダム」と世IV虎選手は謝罪の記者会見を開き、惡斗選手にも直接わびている。惡斗選手はインタビューで、自分にも落ち度があり喧嘩両成敗だ、などと世IV虎選手を庇った。にもかかわらず、「スターダム」は15年5月31日に世IV虎選手の引退を発表した。
ファン達は怒りを露わにしている。「スターダム」の公式ツイッターには、
「惡斗選手と世IV虎選手をリングに復帰させるのがプロレスファンに対しての会社としての責任ではないだろうか...?」
「自分で決めた事かそれとも周りの雰囲気でそうしなければならない状況になってしまったのか?いずれにしろ引退の必要はないと思います。誰も望んでないよ!」
「今度は世IV虎を追い出すんですか?プロレスを見に来ている人を馬鹿にしすぎやしませんか?」
などといった批判コメントが並んでいる。
どうして世IV虎選手は引退することになったのか、「スターダム」のゼネラルマネージャーで、元アイドルレスラーとして活躍した風香さんが15年6月1日付けの自身のブログで内情を語っている。世IV虎選手は風香さんに憧れ、17歳の時にプロレスラーの道を選んだというエピソードは有名だ。ブログではまず、ある人が世IV虎選手に対し、退団してもプロレスを続ける道があるのではないのか、と聞いた際に、
「自分はスターダムのためにプロレスをやってきたから他ではしない」
といい引退を決めた、と書いている。
「戻る場所は私がいるスターダムでしかない」
さらに風香さんは、今回の騒動で人の汚い部分、責任を押し付け合う人も見たけれど、それが彼女を引退に追い込んだ原因であると考えるのは間違いで、責任があるとすれば、世IV虎選手の心を動かせなかった自分だ、とした。「スターダム」を創設し、引退後もプロレス界に残ったのも世IV虎選手を輝かせるためだった。
「いつかプロレスに気持ちが戻った時に、戻る場所は私がいるスターダムでしかないと思う。今はその場所をしっかり守っていくこと。ボロボロになってもそれが私のやるべきことだと思う」
こう復帰を呼びかけた。週刊誌などによれば、世IV虎選手は無期限出場停止処分を受けた試合以降、公の場所に姿を見せておらず、実家の自分の部屋に籠る生活を続けていた。4月頃からようやく落ち着きを取り戻して実家の店を手伝うようになったが、恩人の風香さんからの電話にさえ出なかったという。世IV虎選手は15年6月14日の後楽園ホール興行でファンに最後の別れの挨拶をする予定になっている。