「世界一過酷」といわれるドイツのサーキット「ニュルブルクリンク」で行われた伝統の24時間レースで、2015年はトヨタ、日産、スバルの3日本車メーカーと日本人レーサーの活躍が目立った。
トヨタとスバルはいずれもクラス優勝で、総合でも上位に進出。日産はクラス優勝こそなかったものの、総合で9位に食い込む健闘を見せた。いずれもアウディ、BMW、ポルシェなどドイツの強豪チームを抑えての勝利で、欧州で日本車の名声が高まるのは間違いない。
雪辱を果たす
レースは5月14日から17日にかけ、ドイツ北西部のニュルブルクリンクサーキットで行われた。主催者のADAC(ドイツ自動車連盟)によると、欧州メーカーを中心に151台が参加し、完走は102台。総合優勝は「アウディR8 LMS」、2位は「BMW Z4GT3」、3位は「ポルシェ997 GT3R」だった。
トヨタ、スバルが参戦し、日本でも人気だったのはSP3Tクラス(排気量2リッター以下のターボ車)で、「スバルWRX STI NBR2015」がクラス優勝(総合18位)、「レクサスRC」がクラス4位(総合39位)に入賞した。2位は「アウディTT」、3位は「アウディTT RS」とドイツ車が占めた。スバルWRXのクラス優勝は2011、2012年に続き、3年ぶり3回目。総合18位も2008年の参戦以来、最高位だった。
このクラスは改造範囲が狭いため市販車に近く、ベース車両の真価が問われる。それだけに欧州では注目度が高く、ユーザーがクルマを選ぶ際の指針になるとされる。欧州のモータースポーツ人気は日本とは異なるからだ。
ところが近年は、このクラスでスバルなど日本車が上位を占めるため、アウディなどドイツ勢が巻き返しを図り、昨年、一昨年と日本車は勝利を逃していた。それだけに今回、雪辱を果たした関係者の喜びはひとしおだ。スバルチームを率いたSTI(スバルテクニカインターナショナル)の辰己英治総監督は「今回は完璧なレースができた。世界中のスバルファンにスバルの優秀性を改めて証明することができ、とてもうれしい」と語った。
日本人レーサーが活躍
トヨタはレクサスRCのほか、「レクサスLFA Code X」がSP-PROクラス(排気量3リッター以上)で優勝。総合でも14位となり、チームを率いる「TOYOTA GAZOO Racing」のモリゾウこと豊田章男代表(トヨタ自動車社長)は「私の場合は順位よりも、みんなでマシンを仕上げ、最後まで2台そろって完走できたことがうれしい」と語った。
日産は「日産GT-R GT3」が総合9位(クラス9位)でフィニッシュ。「近年の参戦では最上位の結果」(NISMO=ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)となった。ドライバーを務めた星野一樹選手は「日産GT-R GT3の信頼性、ポテンシャルを証明することができた。来年はさらに上を目指して頑張りたい」とコメントした。
今回のレースは、日産チームの星野選手はじめ、トヨタ、スバルとも日本人レーサーの活躍がチームの好成績に結びついたことも特筆される。とりわけトヨタはレクサスLFAが影山正彦、石浦宏明、大嶋和也、井口卓人、レクサスRCが木下隆之、佐藤久実、蒲生尚弥、松井孝允の各選手と、参戦した2台とも全員が日本人レーサーだった。
この点、スバルは4人のドライバーのうち、日本人は山内英輝選手。日産も4人のうち、日本人は星野選手だけで、ニュルブルクリンクに慣れた外国人スペシャリストの存在も大きかったようだ。
ニュルブルクリンクには北コース(ノルトシュライフェ)とGPコースがあり、24時間レースは両コースをつなぐ25キロで行われた。とりわけ北コースは約300メートルの高低差があるほか、低速から超高速まで大小170ものコーナーがあるため、ポルシェ、BMWなど欧州メーカーは古くから市販車開発のテストコースとして活用し、クルマの完成度を高めてきた。1990年前後から日産がGT-R、スバルがインプレッサWRXなど高性能車の開発をニュルブルクリンクで行い、最速タイムを公表するなどしたため日本でも知名度が上がり、今回のレースもスポーツ専門放送局JSPORTSやインターネット動画サイトUstreamで放送された。