煮え切らない? 韓国銀行の態度
そうした中で、朝鮮日報日本版(2015年5月22日付)は「『アベノミクスに学べ』韓国政府の評価一変」との見出しで、当初アベノミクスを「輪転機で紙幣を刷ること以外の何物でもない」と低い評価を下していた、チェ・ギョンファン経済副首相兼企画財政部(省に相当)長官が「アベノミクスは当初は周囲から懸念もあったが、規制改革と対外開発を両軸に成果を収めている」と、評価を改めたと報じた。
報道によると、韓国の公共、労働、教育、金融の4つの構造改革の進展が思わしくないため、「日本から学ぶことは学ぼうという趣旨」があるとしている。
とはいえ、韓国に「アベノミクス」のような「大胆な金融政策」がとれるのだろうか――。韓国の中央銀行である韓国銀行は5月15日、定例の金融政策委員会で政策金利を2会合連続で1.75%に据え置いくことを決定した。
前出の第一生命経済研究所の西濱徹氏は、「『大胆な金融政策』の前に、まずは金利を下げることができます。デフレに陥るよりはましですし、(大胆な金融政策を)やろうと思えばやれないことはないでしょう」という。ただ、「日本は『異次元』と表現しましたが、韓国はそれこそ『清水の舞台から飛び降りる』くらいの覚悟がないとむずかしいですね」と話す。
「大胆な金融緩和」を妨げているのは、1000兆ウォンともいわれている家計の債務負担だ。「日本と韓国では債務の構造がまったく違います。たとえば、いまゼロ金利にするとお金をたくさん借り、家計の借金が増えて、債務がさらに膨らんでしまう懸念があります。韓国銀行としては、それは避けたい」と説明する。
韓国でいっそうの金融緩和を期待する声は少なからずある。そうしたなか、韓国銀行が「円安ウォン高」の動きに対して「政府と協力して対応する」とした一方で、「輸出鈍化に、金融政策では対応できない」と市場に広がる追加の金融緩和観測をけん制するなどの煮え切らない態度をとるのは、そんな事情があるからのようだ。