政治が冷え込んでいても経済交流は活発な「政冷経熱」が続いていた日中関係で「政」も動き出したことで、韓国側も焦りの色を濃くしているようだ。
一方的に日本側を非難することが多い韓国メディアでも、一度も実現していない首脳会談実現のために日韓双方が努力すべきだという論調も出始めた。
「強硬一辺倒の対日外交」の「後遺症」を受け止めるように求める
中国の習近平国家主席は2015年5月23日夜、自民党の二階俊博総務会長率いる3000人の訪中団を前に約40分にわたって演説。歴史問題については「歪曲は許されない」とクギを刺したものの、総じて日中友好の重要性を訴えるものだった。この演説は翌5月24日付の中国共産党の機関紙、人民日報でも写真付きで1面トップで取り上げられ、中国当局の日中関係改善に向けた強い意欲を裏付ける形になった。
この動きに、韓国が強い関心を示している。今回の訪中団が訪中する前の段階でも、習主席と安倍晋三首相は過去に2度にわたって首脳会談を行っている。一方の日韓関係を見ると、5月23日に麻生太郎財務相と韓国の崔ギョン煥(チェ・ギョンファン)企画財政相が会談し、日韓財務対話が12年11月以来2年半ぶりに再開しているが、安倍首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領による首脳会談はいまだに実現していない。
こういった状況に「韓国が一人ぼっちにされる」という懸念を示したのが東亜日報の5月25日付の社説だ。
社説では、
「安倍政権発足後、歴史問題に関連し、日本が韓日関係悪化により大きな責任があることは事実」
などと日本側の方が責任が大きいという従来の姿勢は崩さなかったものの、韓国側にも一定の責任があるとする点で異例の内容だ。例えば、
「朴槿恵政府も、強硬一辺倒の対日外交が招く後遺症をあるがままに受け入れ、より柔軟な態度を示すのが望ましい」
として、外交部や大統領府の報道官ではなく、朴大統領本人が頻繁に対日批判を口にしていることについては「望ましくない」と指摘。韓国側にも
「声高に怒りを表すのは簡単だが、国力をつけることこそ、真なる克日の道になるだろう」
と自制を求めた。
歴史問題とは別に「協力することは協力しよう」
また社説では、
「最近、中国の微妙な変化で、やや間違えれば韓国だけが一人ぼっちにされることになるかもしれないという懸念を生じている」
とも書いており、中国の動きに対する警戒感を隠さない。その上で、日韓政府が、
「究極は首脳会談の開催にまで漕ぎつくことができるよう、一緒に努力しなければならない」
として、やはり韓国側の努力も求めた。
中央日報も、
「短期間での解決が難しい歴史・領土問題が足かせになって両国間に必要な他の分野の協力まで支障が生じるのはお互いマイナスだ」
として、歴史問題と経済問題は切り離して対話を進めるべきだと主張。日中両国が「急速に関係を復元している」ことを背景に、
「歴史問題を伏せてしまうということではない。それはそれとして扱い、協力することは協力しようということだ」
として、閣僚級会談の再開が首脳会談実現につながることへの期待を寄せた。
ただ、日韓首脳会談をめぐっては、日本側は「対話のドアは常にオープン」と繰り返す一方で、韓国側はいわゆる従軍慰安婦問題をめぐる謝罪が会談の前提だと主張してきた経緯がある。こういった前提条件を韓国側が変えない限り、現実的には首脳会談の実現は困難だとみられる。