緊急連載・はじまった機能性表示(2)
「イメージで売る」はもう許されない 企業名、安全性データすべてが公開される

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企業はうそ偽りのない情報を出してほしい

――届出だけで済むため、企業側にとって都合の良いことばかりを表示内容に入れる心配はありませんか。

森下 確かに消費者からは、メーカーが必要以上に宣伝することはないのかとの懸念は出ました。しかし今回の制度は企業にとって「規制強化」の面があります。消費者庁には健康被害情報の収集、安全性、医薬品との相互作用、品質に関しての届出が義務化されました。すべてのデータは消費者庁のウェブサイトに公開され、消費者はいつでも閲覧できます。これまでは、こうした措置はありませんでした。
   商品の機能性表示の内容も、曖昧にしてはいけない。例えば「BMI(肥満指数)を改善する」だけでは、BMIが高い人を下げるのか、低い人を上げるのか分かりません。ほかにも「目の機能を調整する」ではなく、「目のピント機能を調整する」でないと、機能性表示にならないのです。企業は、ごまかそうとする姿勢は許されません。逆に直接的な表現ができるようになるので、消費者にとっては分かりやすくなるでしょう。
   もちろん企業は、うそ偽りのない情報を出してほしい。例えば販売時には100ミリグラムと書いてあるのに本当は入っていなかった、では困ります。

――機能性表示の制度を定着させていくうえで、企業が果たすべき役割は何でしょうか。

森下 ひとつは、消費者が誤認しないような売り方をすることです。消費者庁は企業側に「患者のデータを使わない、健康な人のデータのみを使用」としています。機能性表示はあくまでも、健康増進を目的とした食品が対象だからです。この点を徹底してもらいたい。
   企業は、やり過ぎないように「えり」を正す必要もあるでしょう。業界で自主ルールを設けて、悪質な業者は排除するような努力を求めたい。今回、届出後に問題があれば販売を差し止める「事後規制」としたのは、実は大きな変化です。(政府による許認可制といった)「事前規制」では、産業の発展や自由な発想を阻害します。事後規制の定着は政府にとってチャレンジですが、日本の産業界全体にとっては大変重要だと考えています。

――では、機能性表示が産業全体にどんなインパクトを与える可能性がありますか。

森下 新制度ではサプリメントや加工食品に加え、農産物や魚といった生鮮食品も対象としました。世界で初めての試みです。
   日本の農産物は値段が高く、なかなか輸出につながりにくかったのは事実です。一方で、品質の高さは世界に誇れます。そこで機能性の成分を増やしていけば、ていねいにつくっている日本の農業の強みが生かせて海外でも十分通用するようになると考えています。(次回につづく)

プロフィル
森下竜一(もりした りゅういち)
大阪大学臨床遺伝治療学・安倍内閣規制改革会議委員、健康医療戦略室戦略参与
医学博士。抗加齢医学専門医、老年病学会指導医、臨床内科認定医。1987年大阪大学医学部卒業。1991年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業。同年、米国スタンフォード大学循環器科研究員。2003年大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授。2013年より内閣府規制改革会議委員、内閣官房 健康・医療戦略室戦略参与(本部長 安倍晋三)、大阪府・市特別参与などを務める。主な受賞歴にアメリカ高血圧評議会HarryGoldbratt賞、日本医師会研究奨励賞、日本循環器学会佐藤賞、産官学連携推進功労者表彰産官学連携文学部科学大臣賞がある。
日本高血圧学会、日本抗加齢医学会、日本遺伝子治療学会、日本ベンチャー学会などの理事も務めている。

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