日本動物園水族館協会(JAZA)が追い込み漁で捕獲されたイルカの入手禁止を発表したことを受け、全国の加盟水族館に動揺が広がっている。
全63の加盟水族館のうちイルカを飼育しているのは約30施設で、追い込み漁で有名な和歌山県太地町(たいじちょう)からイルカを購入している施設も多い。だが、JAZAの決定を受け、協会脱退を検討せざるを得ないという施設も出てきた。
「脱退も可能性としては十分あります」
世界動物園水族館協会(WAZA)は、JAZA加盟の水族館が太地町の追い込み漁で捕獲されたイルカを入手していることを「倫理規定に反する」として問題視。2015年4月21日付でJAZAの会員資格を停止し、5月21日までに改善されない場合は除名すると通知していた。
これを受け、JAZAは加盟する動物園と水族館全152施設を対象に投票を実施した。結果は有効投票142票中、「残留」が99票、「離脱」が43票。この結果をもとにJAZAは20日、WAZAに残留を求めたと発表した。
イルカを飼育する加盟水族館は、この決定に戸惑いを隠せないようだ。
「非常に残念な決定」――。21日、大分マリーンパレス水族館「うみたまご」(大分県大分市)の田中平館長は報道各社の取材に、こう語った。同館では現在、系列水族館と合わせて27頭のイルカを飼育しており、うち26頭は太地町から購入したという。
今後は繁殖や他施設との協力を進めていくとしているが、それも簡単な話ではない。イルカの繁殖は技術的に難しいだけでなく、「野生の血を入れないと血が濃くなって色々な問題が出てくる」(田中館長)という。専用施設を設置する費用も高額だ。田中館長は、
「いろいろな選択肢を考えています。その中の一つとして協会からの脱退も可能性としては十分あります」
との見方を示した。
「支持します」「水族館で共闘して対抗してもいいのでは?」
田中館長の話は、各マスコミが「脱退示唆」などと見出しにとって取り上げたこともあり、インターネット上で大きな反響を呼んだ。
「和歌山へ行くことがあれば寄らせてもらうわ。支持します」
「いじめに泣き寝入りは良くない。水族館で共闘して対抗してもいいのでは?」
「他の水族館なども、同調すれば、繁殖などで協力も可能でしょう」
といった応援の声も相次いだ。
なお、脱退を視野に入れているのは「うみたまご」だけではない。
太地町から購入したイルカ3頭を飼育している「あわしまマリンパーク」(静岡県沼津市)の佐藤充館長は、J-CASTニュースの取材に応じ、
「日本のイルカの追い込み漁は、資源保護上問題のない捕獲枠で行われている合法なもの。決定してしまった以上は仕方がないことだが、納得できない部分もあり、残念に思う」
と不満をにじませつつ、
「今後については現時点では未定だが、ゼロベースで考えないといけないだろう。脱退も視野に入れて考えないといけない」
と語った。