「カラクリ」指摘の恐れ
削減目標の出発点になる「基準年」も国際的に火種になる恐れがある。日本は従来の政府目標で2005年比を使ってきたが、今回の目標は2013年比に改めた。「福島第1原発事故でエネルギー事情が変化したので、その後を基準にするのが適当」(経済産業省筋)との判断だ。
実は、2013年の日本の排出量は過去2番目に多く、京都議定書の基準年である1990年比で2013年は10.8%も排出量が増えている。排出量の多かった年を基準にすれば、削減目標幅は当然、大きく見えることになる。米欧の目標は2013年比では日本より低い数値になるという「カラクリ」も指摘される。
米国の目標「2025年に2005年比26~28%減」は2013年比では「19~21%減」に、欧州連合(EU)の「2030年に1990年比40%以上減」は2013年比で「24%以上減」になり、日本の目標の方が高くなるのだ。ちなみに、米欧は趨勢としてCO2排出が減少傾向にあり、EUの2013年の排出量は1990年比で20%以上減らしている。
日本の今回の目標は1990年比では18%削減にしかならないから、日本と米欧のどちらの目標が意欲的かは、言うまでもないだろう。
今回の目標決定について、安倍首相は「諸外国の批判を招かないように」と指示したとされる。基準年を変えてまで仕上げた数字だが、国内のNGOや野党などからも「ご都合主義」「国際的な信用を損なう」などの批判が出ており、国際的にどのように評価されるか、予断を許さない。