「障害者に関する世界に行くと、面倒臭い人がいる」―――陸上男子400メートル障害の日本記録保持者でスポーツコメンテーターの為末大さん(37)のツイートが波紋を広げている。障害者への理解が進まない一番の理由は、そうしたヒステリックな正義の人がいるからだ、というのだ。「障害者の方だけに特別慮らなければならないとは思いません」とも綴った。
為末さんは元アスリートの立場で障害者を取材することも多く、競技用義足の研究開発に携わったり、2014年からは文部科学省のパラリンピック強化のための有識者会議にも加わったりしている。
言ってはいけない言葉が多すぎる「話すのをやめました」
為末さんは2015年5月20日、自身のツイッターでこうつぶやいた。
「障害者に関する世界に行くと、面倒臭い人がいて、それが嫌になって障害者に関する仕事は避けようかなとなっている人がいかに多いことか。障害者への理解が進まない一番の理由はヒステリックな正義の人だと思う」
ヒステリックな正義の人の例として、「400メートル障害」ではなく「400メートルハードル」と言ってほしいとか、「障害」ではなく「障碍」にしてほしい、などと訴える人たちで、言ってはいけない言葉が多すぎたため「しばらく話すのをやめました」などと説明した。為末さんのツイッターには賛成、反対の多くのリプライが寄せられ、為末さんがそれに何度も返答したことでちょっとした議論の場へと発展した。賛成の意見としては、
「障害者の中には甘えている人がいて、その甘えを許していてはダメで、愛を持って厳しく叱る事が大事です」
「当事者達より支援者と名乗る人達の方がはるかに面倒臭かったです。『当事者はかわいそう』というスタンスでの言動をする人が多かった。そういう人って無駄に熱心だったなという印象です」
「障害者の方本人は気にしていないのに、周囲が勝手に嫌だろう、差別的な表現だと決めつけて...。自称支援者が一番差別視していると思うんです」
などといったものが出た。もちろん反発もあり、為末さんのような健常者には障害を持つ人の気持ちがわからない、とか、障害者のいる世界で働いた経験があるけれども面倒くさいことなどなかった、などといったものだ。
「深く理解してくれる人しか認めない」では先に進めない
そうした反発意見に、為末さんは何度も回答をしている。そこには、確かに障害者にならないとわからないこともあるが、一人一人はそれぞれで、全く同じ人間はいないから全員に「わからない」が当てはまる。
「障害者の方だけに特別慮らなければならないとは思いません」
などと答えた。また、
「当事者は1人でも多くの理解者を求めてますっ!!!!!」
という意見に対して為末さんは、「理解してください」なのか、「理解するべきだ」という姿勢なのかで北風と太陽のようにずいぶん違う気がするとし、
「深く理解してくれる人しか認めないという姿勢だと、結局世の中の多くの人はめんどくさい事が嫌いなので理解が進まず、その弊害が出ているように私は思います」
と返した。障害者に関する法律や、障害者に対する人々の態度はいくらでも整備できると思うけれども、人の腹の底にある考えは強制ができない。偏見を無くすためには理解してもらおうという努力が必要で、そのためには対話を続けるしかないのだけれど、対話を続けるには残念ながら世の中にはたくさんの問題があり難しい、と説明した。
こうした為末さんのツイッターでのやり取りについてネットでは、
「ヒステリックな正義の人って、差別されている本人は声に出して言いにくいから替わりに私が言っていかなきゃ、と過剰に思ってる奴の事だろ」
「障害者の一番の敵はモンスター障害者とその理解者」
「マジでこれは思う。障害者支援の連中って何様のつもりなのか、 なんであんな偉そうな態度取れるのか不思議」
「親父が事故で障害者になったけど家族はいたって普通だよ。気を遣うほうも疲れるけど遣われるほうも疲れるんやで」
などと言った意見が掲示板などに出ている。