海岸の枯れたクロマツ【福島・いわき発】

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   わが家から夏井川の河口までざっと5キロ。ときどき太平洋を眺めながら、海岸線に沿って伸びるクロマツ林の縦貫道路をドライブする。河口左岸、四倉寄りの一部区間が海岸堤防工事のため、2016年3月末まで通行止めになっている。

   江戸時代初期、上総から磐城平に移った内藤の殿様が、海岸近くの田畑を守るためにクロマツを植えた。防風・防潮林は以後、歴代の領主・幕府代官が保護した。明治2年の版籍奉還後は国有林に編入された。街道の松並木を含めて、地元では「道山林(どうざんりん)」と呼ぶ。「道山」は殿様、内藤政長の法名「悟信院養誉堆安道山大居士」からきている。

   東日本大震災では、海岸堤防・クロマツ林・横川(夏井川と仁井田川をつなぐ)・河川堤防などがバリアになり、大津波の被害を軽減させた。新舞子の南、豊間と薄磯は壊滅的な被害を受けた。沖釣りをする人間によると、豊間と薄磯には磯がある。しかし、新舞子にはない。この海底地形も被害の大小に関係しているようだ。

   クロマツの単一林は大きな代償を払った。次第に"茶髪"になり、立ち枯れた。湯澤陽一いわき地域学會顧問(植物学)によると、塩分の浸透圧が原因だ。津波が運んできた塩分を過剰に摂取したために、脱水症状をおこした。

   松林がスカスカになっている。林内には伐採・切断されたクロマツが点々と積み重ねられている。"茶髪"はやがて黒ずみ、落葉して、さらにスカスカした状態になる(=写真)。潮風が吹き抜けていく。

   津波被害が甚大だった久之浜や薄磯、豊間などでは防災緑地づくりが始まった。コンクリートの海岸堤防の内側に盛り土をして苗木が植えられる。

   4月11日に久之浜防災緑地で植樹祭が行われた。350人が参加し、クロマツやスダジイなど11種2000本が植えられた。海岸堤防は地盤沈下をした分、かさ上げされて海抜7.2メートルに、防災緑地はそれより1メートル高い8.2メートルになるという(いわき市発行「ふるさとだより」2015年5月号)。

   新舞子の海岸道路をドライブするたびに、ここもクロマツだけでなく、本来の照葉樹を混交して、より多様・多層な林になるといいな、と思う。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
■ブログ http://iwakiland.blogspot.com/

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