日本で唯一コーヒーチェーン「スターバックス」が出店していなかった鳥取県にスタバの出店が決まったことで、注目されているコーヒーショップがある。
それが「すなば珈琲」。鳥取県の平井伸治知事がなぜ鳥取にはスタバが出店しないのかと聞かれた際に、日本一の鳥取砂丘を念頭に、「スタバはないけど、日本一のスナバはある」などと答えたのをヒントに地元企業が始めたコーヒー店だ。「すなば珈琲」は店の存亡をかけるとして、2015年5月23日から5日間のキャンペーンを実施する。
「3回に1回くらいはぜひ、当店の方をご利用ください」
ネット上で今、1枚のチラシが話題になっている。かつて日本に開国を迫ったアメリカの黒船来襲のような絵が描かれ、「いよいよこの時がやってまいりました」と大ピンチキャンペーンを告知するものだ。
「鳥取駅前店の存亡を賭け、覚悟を決めたキャンペーンを展開します。3回に1回くらいはぜひ、当店の方をご利用ください」
というやや情けないキャッチコピーが付いている。キャンペーンの内容も、期間中にスタバ(チラシにはスタバに配慮しスタバの文字は書かれていない)のレシートを持参するとブレンドコーヒーが半額になる、スタバよりも不味いと感じたならばブレンドコーヒーは無料になる、といったものだ。
「すなば珈琲」は14年4月4日、鳥取駅前に1号店がオープンし、現在市内に3店舗ある。また、スタバ出店と同じ日に新業態店舗の4号店「Sunaba cafe」を出店する予定になっている。平井知事が2012年秋に民放番組で鳥取砂丘を「砂場」と表現したことをきっかけに誕生し、今では地元の名物になったコーヒーショップだが、いよいよ本家本元を迎え撃つという覚悟の表れとも取れる。ネット上では「すなばがピンチだ」「自虐的すぎる」などと話題になり、
「ガチの黒船やんけ」
「すなば珈琲がんばれええええ!!食事もコーヒーもあっちより美味そうだし、遠くから応援してるおおおおおお!!!」
「すなば全国展開して闘ってほしいわ」
「ちょっと行ってみたいと思ったから俺にはマーケティング成功してるぞ」
などといった書き込みで盛り上がっている。
スタバと共存共栄、鳥取市をコーヒー消費全国1位に
本当に「すなば」は存亡の危機を迎えているのか。運営する飲食店チェーン会社のぎんりんグループに話を聞くと、
「ピンチとは考えていないんですよ。むしろスタバさんが来てくれることで相乗効果が生まれ、鳥取県のコーヒー需要が増えるだろうと予想しているんです。スタバさんは大歓迎なんです」
と思いもよらぬ返答が返ってきた。ぎんりんグループ担当者によれば、「すなば」とスタバは同じコーヒーショップではあるが、ターゲットとする客層も提供する商品も大きく異なっている。「すなば」は地元で採れた食材を使ったメニューが豊富で、マグロやエビのホットサンド、小倉バターホットサンド、エビカレーなどを提供している。お粥などもある。そのため客の奪い合いなどは考えにくく、むしろ共存共栄になるだろうと見ている。結局、あのチラシは「ネタ」のようなものであり、ネットで騒ぎになっていることが「大成功」なのだそうだ。
そして「すなば」には野望がある。総務省統計局の都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキングによれば、コーヒーの消費量のトップは京都市、2位は鳥取市になっている(12年から14年の平均値)。
「その差は僅差でありスタバと力を合わせて全国一位にしたい」
と意気込んでいる。「すなば」は知事のお墨付きということも手伝い、地元の名物になっていて、県内だけでなく栃木や静岡など各地から客が訪れている。日によっては1店舗に1日あたり300人が訪れるという繁盛店だ。黒船来襲でピンチなどという状況ではないのは確かなようだ。