秋以降も物価上昇ペースが加速しなければピンチ
3つ目の理由は、日銀の最高意思決定機関である政策委員会の中でも、再度の追加緩和に対する否定的な意見が根強いためだ。2014年10月の追加金融緩和は、賛成5人、反対4人の1票差でかろうじて可決された。反対した委員のうち、木内登英審議委員は4月30日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和に伴う副作用の懸念が強まっているとして、金融緩和のペースを徐々に減速することを提案。木内氏の提案は否決されたものの、他の政策委員会のメンバーからも、追加緩和をしてまで2%の達成を急ぐよう訴える声は出ていない。黒田総裁は「物価の基調が変わってくればちゅうちょなく政策の調整を行う」と強調しているが、「日銀執行部が追加緩和を提案しても可決されない可能性がある」(エコノミスト)のが実情だ。
物価目標の達成時期の遅れを認めながら、日銀は追加緩和に踏み切ることもできず、「原油価格下落の影響がはく落すれば、物価は再び伸びを強める」(黒田総裁)という楽観的なシナリオにすがるしかないように見える。裏を返せば、原油価格下落の影響が薄れる15年秋以降も物価上昇ペースが加速しなければ、日銀は申し開きのできない窮地に追い込まれることになる。その時、内外の批判を押し切って追加緩和に踏み切るのか、それとも異次元緩和の限界を認めて現実的な政策に移行するのか。黒田日銀は大きな岐路を迎えそうだ。