武田薬品の「アクトス」訴訟和解へ 経営リスク解消し「新薬開発」に注力

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   製薬国内最大手の武田薬品工業が、糖尿病治療薬「アクトス」を巡る米国での製造物責任訴訟で、大多数の原告と和解することで合意した。2015年4月29日発表した。

   和解金などの引き当てにより、2015年3月期の連結最終(当期)損益は1450億円の赤字(従来見通しは650億円の黒字)に転じる見通しだ。1949年の上場以来初の赤字転落となるが、経営リスクの早期解消を図ることを優先した。

  • 和解の道を選ぶ方が得策と判断した模様
    和解の道を選ぶ方が得策と判断した模様
  • 和解の道を選ぶ方が得策と判断した模様

法的責任を認めるものではないと強調

   武田薬品はアクトスに関連し、「発がんの危険性を十分説明していなかった」などとして、米国で約9000件もの訴訟を起こされている。2014年4月には、アクトスの投与が原因でぼうこうがんになったと主張する米国人男性の訴訟で、米ルイジアナ州の連邦地裁が武田薬品に60億ドル(約7000億円)もの巨額賠償の支払いを命じる評決を出していた。

   武田薬品は今回の和解に関し、「原告側の主張には根拠がない」と主張、アクトスとがんとの因果関係そのものについては否定し、和解が法的責任を認めるものではないと強調している。しかし、米国で起こされている訴訟数が多数に上り、問題が長期化すれば関連費用の負担だけでもばく大な額になると見られるのに加え、訴訟が引き続くことで企業イメージの悪化も避けられず、和解の道を選ぶ方が得策と総合的に判断した模様だ。和解金などの引き当ては約27億ドル(約3200億円)に達する見込み。

新たな稼ぎ頭を育てられるか

   今回の和解に関し、市場では「想定内」との冷静な見方や、「先行きの不安要因がなくなった」など好意的な見方が多い。そもそも60億ドルの支払いを命じた評決は判決とは異なり、減額や取り消しの可能性もあった。しかし、仮に、この評決と同じ規模の賠償金判決が確定し、その動きが他の訴訟にも広がった場合、武田薬品の経営の根幹を揺るがす深刻な事態に陥るのは必至だ。市場でも「アクトスの訴訟は武田薬品株を買い進められない最大の要因だった」(市場関係者)という。和解の実現でこうした懸念が解消できるメリットは大きい。

   今後の武田薬品の最大の課題は、アクトスを超える稼ぎ頭を育てられるか否かだ。アクトスは2011年に特許が切れたが、それ以前は世界で年間約4000億円も売り上げた存在だった。しかし武田薬品には現在、アクトスや同じく特許切れになった前立腺がん治療薬「リュープリン」などの穴を十分に埋められる新薬は乏しいのが現実だ。今回の和解に関し、武田薬品関係者は「新薬開発に集中したい」と述べている。

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