経営再建中のシャープのメーンバンクであるみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は2015年4月末、シャープに対し計2000億円規模の資本支援を行うことで合意した。
シャープはこれまでもメーンバンクから追加融資などの支援を受けてきたが、再建は計画通りに進まず、今回の資本支援に至った。本来なら社長の責任が問われるべき事態だが、シャープ社内の危機感は依然鈍く、メーンバンクをいらつかせている。
技術力の高さにプライド
「いつの間にそんなことになったんだ!」
シャープが2015年3月期の業績予想を下方修正することになった今年2月、主力行幹部は衝撃を受けた。再建が順調に進んでいるはずだったのに、太陽電池やテレビに加え、主力のスマートフォン向け中小型液晶パネル事業の業績までが計画を大きく下回っていたからだ。
「寝耳に水」(主力行幹部)の業績悪化を受け、メーンバンクは慌ててシャープに新たな再建計画の策定を要求。すべての不採算事業の縮小・撤退など「徹底したリストラがなければ支援は継続できない」と厳しく通告した。
ところが、シャープ社内の反応は鈍かった。中小型液晶事業や太陽電池などの不振は一時的なもので、シャープの技術力の高さをもってすれば、必ずライバルを巻き返せる――。そんな雰囲気が蔓延していたのだ。
シャープは再建計画に関する主力行との交渉の真っ最中だった2~3月、報道機関向けに相次いで太陽電池や液晶事業の説明会を開催。いずれの事業も継続し、テコ入れを図っていく方針をアピールした。シャープ幹部は「リストラ報道で取引先や顧客から問い合わせが相次ぎ、不安を一掃する狙いがあった」と釈明するが、説明会の開催を後から知った主力行幹部は「不採算事業の縮小や撤退を議論している最中に、なぜそんな発表をするのか。経営の実態が分かっていないのではないか」と怒りをあらわにした。
シャープを利するような報道もメーンバンクの神経を逆なでした。全国紙などが、シャープが液晶事業を分社化し、官民ファンドの産業革新機構から出資を受けることを検討していると報道。しかし、記事には「分社化後もシャープが過半の株式を持つ」とも書かれており、主力行幹部は「機構から金だけ出してもらい、経営権は譲らないなんて虫のいい話はあり得ない。こういう情報が流れること自体、シャープの経営体制がおかしくなっていることの証左だ」と不満をぶちまけた。